第10話 その2
マンガの専門学校。
マンガ家へのレール。
よく言われる、人生をレールに例えるというモノで言うとまさしくその進路変更こそが重要なポイントになっていたんじゃないだろうか。
もちろん、1クラスに50人程度で、その上そんなクラスが2つ……。 同年代のマンガ家がそんなに必要であるわけもない。 その学校に入った事はレールの変更にはなったが、決定では無かった。
マンガ家になんて簡単になれるわけじゃない。
ただ、俺はそんな状況だろうが、東京に出てこれたというだけで、ハッキリ満足だったのだ。 まあ、うまく行けばもちろん良いんだけど。
自分という個性を完成させるには、東京という場所は素晴らしい場所であったと言える。
お金は奨学金、新聞奨学生として、自力で学費を稼ぐという方法で。 その新聞の寮に住み込んで学生として生活していた。
2年目になれば必然的に先輩になり、自分の確立と言うものにも近づけたのではないか?
ある時、後輩がバカをやらかした。
「……それでね、告白するフリをしてOK貰った後に、誰がお前なんかと付き合うか!! ブースが!! っへへーんだ!! てな感じでからかって来ちゃったんですよぉ」
「……あん?」
「いやあ、泣いてましたけど、達成感みたいなのがあって……」
「おい、それは、ダメだろ」
「いや、でもつるんでる仲間とそういう話になっちゃって……」
「あのなぁ……お前、それ最低だぞ?」
「……マズイですかね?」
「ああ、お前は最低のクズだ。 そんな事俺に話して盛り上がるとでも思ってたのか?」
「……いや、その……」
「謝れ」
「……すみません」
「俺にじゃなくて、泣かせた女の子いるんだろ、そっちにも、俺は顔知らんけど、でも、そっちにも絶対に謝れ」
「……はい、わかりました」
後日、すみませんと頭を下げて、土下座までして謝ってきたらしい。
いつの間にか、説教する方へと……。 そして人を動かす、というかそいつの人生はそこで多分変わったんじゃないか? と、思う程。 俺は自分というモノの確立と、そして何より強くなっていた。
寮にいる学生は、みんな一緒の学校という訳ではないけれど、だから、こういった事件も起こる。
俺の『生きる』という事はこの辺りで固まったのだと思う。
そんな訳で、ネットの中で流れている流行語だとかには全く興味がわかない。 周りの人間が使ってる言葉だから流れで使っちゃえと、そんな風に流されるのは俺には無意味だ。
面白いのならいい。
だけど、人を不愉快にさせるようなのはダメ。
明確なライン引きが俺の中にあるとすれば、それは『楽しい』か『不愉快』か。
代表的な『リア充死ね』は、リアルに充実した人間が死んだら、お前ら嬉しいの? という具合でハッキリ言って嫌いな単語だ。
汚い言葉はだいたい嫌いなんだけど、数え上げたらキリがない。
自分で、底辺から這いずり上がって来た。
テストの答案を白紙で出す事は、そこに書かれていた問題を解けないだけで、俺の人生の正解を導いてくれた。
だからと言って、安易に答案用紙を白紙で出すような真似は誰にも勧めないのだけど。
何かを解決するという事は、全く思いがけない行動から解決する事もあるという事実を自分自身の目で見てきたから、誰かの言っている情報よりも自分の目で見てきた事を基準に考えるのだ。
……ポツリポツリと、そんな事をエリシェに話した。
なんで、いきなり建物を壊したり、怒ったりしたのか? という話から。
俺の世界で起こった事だから、エリシェにはどれくらい伝わっているのかわからない。
ただ、「リョウタさんは、そのまま、変わらずにいてくださいね」という言葉を投げかけてくれた。
俺は俺のままで良いんだ……。
エリシェに認められたような気がして嬉しかった。




