第10話 「強化と大切なモノ」
スコアアタックではSPが稼ぎやすくカードの強化底上げをスムーズに進めることが出来る。 だが、撃破ボーナスの異常な高さからトドメだけを狙うプレイヤーが出た事や、それに準ずる行為(トドメは刺せるようなら指す位で普通に戦ってる人)が急増した為に一時その協力プレイ自体をとりやめてしまった。
ロケテストから完成版になってスコアアタックは単純にスコアを競って全国で協力プレイが出来るようなバランスを確保し、強制的にタイムアタックしか選べなかった当初とは大幅に変わっていた。
そんな経緯がある為に、ネット内での評価や、プレイヤーを名指しで晒すという晒し行為など(もちろん晒した本人は匿名という卑劣さ)、壮絶な足の引っ張り合いが影では進んでいた。
そんな噂などは別にどうだって構わない。
俺は基本的にネットの中の噂を信じない。
何故なら、他のMMOなどで親切な人だな、とか、話しやすい人だなとか思った人が晒されていたりしたからだ。
自分の目を信用しなければ、今後、『生きているとは言えないような』そんな状態に追い込まれる……。
そう思うまでの理由の説明には少し昔の話をしなくてはいけないかな。
小学生の頃にトラウマになった失語症の事件以来、人という人の全てが恐ろしく、小、中学生までが一貫だった環境もあって、高校生になったら何かが変わることを期待していた。
実際、高校生になると違う現実が待っていた。
例えばテストで良い点を取った時の反応だ。 これが一番印象に残っている。 それまでは良い点を取っても褒められる事は無く、これが出来るのなら他も頑張れよ、とか、なんでお前に負けるのか納得行かないだとか、周りの誰ひとりとして褒めるという事をしなかった。
そんな状況にあって、唯一楽しい時間はゲームをしている時間だけだ。
コミュニケーションの取り方が分からなくなっていた俺には、ゲームという世界はまるで別世界。
……俺の人生はゲームによって支えられて来た。
まあ、偏った情報源である事は間違いないが……それ以上に間違っている現実なら、俺は簡単に捨ててしまえばいいと思ったものだ。
どうやって捨てるか? 分からなかった。
高校生の頭ではこの問題はちょっと荷が重い。 頭が真っ白になる。
真っ白な状態でテストを受けた。
俺は真っ白なまま答案用紙を提出した。
……職員室に呼び出された。
「……お前、これは……本当に何も分からなかったのか?」
「……はい」
「教科書さえ見てれば……範囲だって教えてあっただろう?」
「……はい」
「……分からなくても、何かあがくことは出来たんじゃないか? なんでもいい、分からなくても何か書けたんじゃないか?」
「あ、そう、ですね……でも、なんだか悩んでて」
「悩み? 悩みってなんだ?」
「俺はマンガ書きたいんです」
……これはまあ方便だった。 それでも、高校に来て人との距離の取り方だとかが分かってきたように思っていたのだが、いや、だからこそ、人生をリセット出来ればいいなと思っていた。
理由は、高校に入り、やっと芽生えてきた自尊心や自分の中にある何か。
何かってなんだろう? 勘なのかな……。
高校に入ってからは結構楽しくやれた。 それでも狭い田舎の高校という範囲内の出来事だ。
高校に入っただけでこれだけ変われたのなら、東京に出てみたらどれだけ変われるのだろう? そんな漠然とした何かだ。
「それならそれで先生が推薦してやる事だって出来るんだ」
「……え?」
これはもちろん親には反対されてた。 東京に出てみたい。 速攻でダメ。 ってのは無理もないんだけど。 お金だってかかるし。
その辺りの事情も含めて相談した。
俺の人生で初めて、大人が俺を救ってくれたような……そんな瞬間。
食べ物があれば生きていける、服があれば、住むところがあればとりあえず生きていける。 でも、それじゃあ自分の意思がない。 生きてるって言えない。
その先生に初めて、生きるという事を習った。




