第2話 その2
「無条件でエリシェの味方だよ」と忠誠を誓っておきながら、しかし自分の強化がしたいと申し出るリョウタ。
タイムアタックステージに挑み、順調にスコアを重ねて行く。
ここも強化中の主人公で、無双とはかけ離れてます。奮闘する姿を見たいのならこのままどうぞ。 次ページでまた解説します。
タイムアタックステージ3
「今回のターゲットは山道の中程にある小屋付近のオーク達の殲滅です」
「よし、また林の中が主体の攻防だな?」
「がんばりましょう、これが今回最後の依頼です」
「林の中の動き方はだいたいコツを掴んだし、大丈夫でしょ」
はっきり言って油断していた。 予想出来なくもない事なのに。 ……オーク共を木の陰から狙い撃ちして後退。 ここまでは悪くなかった。
「緊急連絡です!」
「え?!」
「手負いのワイバーンがこちらに向かっています!」
「え、ボス的な?!」
「恐らく、他の依頼で倒しきれなかったモノでしょう」
「う、オークはどうすりゃいいんだ?!」
「……オークも撤退を始めていますね」
「俺らは?!」
「逃げるなら、侵入してきた道を戻ることになります」
「……戦うことも出来るって事か」
「そうですが……どうします?」
「初のボス戦だし、やれるだけやってみるよ」
「無理しないでくださいね……」
「やってみるだけだ!」
とは言え、ローガンくらいしか遠距離でまともな攻撃手が居ない。 上空を咆吼と共に飛び回る相手には飛び道具しか攻撃が届かないという……。
自キャラの攻撃で少しでも削れれば良いのだが、少し当たったとしても全く削れている様子は……いや、少しは削れているのか?
「無理せず撤退を」
「……そうだな……」
ワイバーンは元々手負いの状態で現れた為、倒せるかと思いきや、逆に怒りに任せてブレスを吐きまくるし、しかも遠距離攻撃しか届かないし。
ブレスもかなり特殊なブレスで、着弾したのが地面であろうが本人直撃であろうがダメージを負ってしまうような、無茶苦茶な攻撃だ。 もちろん直撃よりは避けたほうがダメージは少ないのだが……。
「危険です! 引いてください!」
「仕方ない……!!」
あきひさの体力が残り162まで削られていた。 これは直撃したらやられる体力だ。 やばい……そう思った頃にはもう遅かった。
ステップに失敗し、木に引っかかっているあきひさ。
「ああ!!」
「うげ、やられた!! ……あ、カードチェンジがあった」
ここまで追い詰められて思い出した。
「はい、アルティシアさんのシルフの加護がありますね!」
「くぅぅ、タイムアタックって名前に騙された!」
「……仕方ないですよ、緊急事態なんですから」
カード戦士あきひさを失い、エリシェのMPが600から529に下がる。
「今回は、まあ、引き分けにしといてやるよ!」
と、まるでモブのようなセリフを残して撤退する俺。
なんとか逃げ切り、街への帰還呪文コーリングを使ってもらう。
「撤退します、コーリング!!」
タイムアタックステージ3
今回のスコア
ステージボーナス 30000点
撃破ボーナス 10000点
ダメージボーナス 3200点
合計 43200点
タイムアタック合計スコア 216200点
取得SP 21
「ふう、スコアは稼げたけど損害も出てしまったなー」
「これからですよ、これから!」
……街へ帰って来た。 これで終わりなのもなんだし、もう1コインかな……とりあえずギルドでドローだ。
「ギルド行ってドローしてくるわ」
「はい、行ってらっしゃい」
取得カードは
魔女ひめ 杖LV2 HP400
スキル ヒーリングLV1 コスト78
数値は弱いけど、スキルがあるぞ? 魔女ひめって、『ひめ』が名前なのか……。 これは良いカードなのか、ザコカードなのか?
財布の中身と相談だな。 と、中をみると100円玉が1枚ある。 だけども、喉も乾いた……。
結局、両替に席を立つことにした。 そこでバッタリ……
「よ!」
「あれ、渡部じゃん」
「この時間に、ここに居るとは意外だなぁ、リョウタ」
「いや、こっちも意外だよ」
彼の名は渡部芳雄。 ため年で同じ会社。 ただ、部署が違う。
「リョウタ、そのゲームやってんの?」
「ん? これか、今日が初プレイだよ」
「おお、そっかそっか」
「……なんだ、やり込んでるのか?」
「そんなでもないよ、ロケテストだしね」
「なんだろう、結構難しい気がするよ」
「慣れだって、慣れ」
「ふうむ……」
「カード何枚集まった?」
「4枚だな、でも1枚ロスト中でね」
「そうか……もうちょいやってく?」
「いや、夕飯あると思うし帰るかな?」
「そうか……せっかくだし飯でも食ってゲーム談義でもと思ったんだが」
「……それいいね、ちょい待って」
携帯を出し、家に電話。
「……うん、それで友達とバッタリ会ってさ、メシ食おうって話になったんで、今日は俺の分はいい」
と、一方的に家族の食卓を放棄することにした。
「……無理に誘ったわけじゃないんだけどね」
「いや、こっちも話したいしさ」
近くにあるメシの食える場所。 牛丼の一択だった。
「ま、いつものコースかね」
ちょっと車を使えばファミレスもあるのだが、歩いて行ける距離はここが無難だ。 彼はゲームの情報をネットを使って仕入れるタイプ。
ある程度の情報を持っているにちがいないのだった。