第8話 その5
敷き網、という漁法が一番分かりやすいようなのでそれを採用する事にした。 まあ、誰でも思いつく方法で、網を敷いておいてその上に魚を誘導して一気に引き上げる。
こんななら、別に図書館なんか使う必要も無かったのかも。
問題の水温だが……、これは温かい方だと思う。
リョウタ
「これ、季節ってどうなってるの?」
エリシェ
「あ、リョウタさんの世界では季節というものがあるのでしたね」
リョウタ
「うん、この前雪がチラついてるくらいだったのに……」
マキナ
「この世界では季節というモノはありませんよ」
リョウタ
「そう……なのか?」
エリシェ
「詳しくは省きますけど、精霊達の活動がそれぞれの地域の気候を左右しているんです」
リョウタ
「……あと、残る問題は別になしかな?」
漁自体は順調に進んだ。 鎧さえ付けてなければ俺だって泳げるんだ。 多少砂浜に凹凸があって、その浅瀬に追い込むように魚を誘導する。 誘導に関してはメロウ族の出番だ。
ロコ
「なぁんだ、意外にあっけなく捕れちゃうんだね」
リョウタ
「これで、魚を取ったらそれを商売にしたらいいと思うんだけど、どうなんだろう?」
ロコ
「そういや、ここら辺てメロウ族が居るからなのか漁をやってる人間て居ないよね?」
エリシェ
「そうですねぇ……私達の故郷では漁は普通に行われてましたし、メロウ族が居るからってだけで人が寄り付かなくなるモノなのでしょうか?」
シックザール
「これは食う為に捕ってたんじゃないのか?」
マキナ
「……味見は必要ですよね! 売るにしても!」
リョウタ
「はは! そうかもね、それも楽しそうだ」
ロコ
「……ありがとうな、俺、お金とか持ってなくてさ……網とか用意してもらったり」
エリシェ
「いいんですよ、そんなに高いものじゃないですし」
リョウタ
「そんじゃ、キャンプファイヤーみたいなモノやれるかな?」
シックザール
「そこまでせんでも、火さえおこせたらそれでいいんじゃないか?」
マキナ
「現地で食べるなんて、なんだか美味しそうですね!」
即席の石で作った、ただ燃え草を囲うだけのカマド。 それに火を付けて魚を焼き始める。 魚が焼ける良い匂いが食欲を掻き立てる。
ロコ
「なんか、楽しいな、こういうの」
リョウタ
「……そいえば、なんでロコはひとりでこんな浜に上がってぼんやりしてたの?」
ロコ
「ああ、そうだ、魚が捕りたかったってワケじゃないんだよ」
リョウタ
「そりゃあ分かってるよ」
ロコ
「ただ、楽しくなかったんだ」
シックザール
「どういう事だ?」
ロコ
「女性は美しいのに、俺達男はこんなだろう? そんな男達だけで集まったら、なんか余計に辛気臭くなっちゃってね」
リョウタ
「そうか、分からんけど、今はとりあえず楽しく魚を焼こうよ」
ロコ
「へへ、そうだな。 俺はバカだけど、だから何が楽しいのかって事くらいは分かるつもりでいるんだよ」
シックザール
「おう、人生は楽しまなきゃな」
ロコ
「あのさぁ! 良かったらコレ、仲間も呼んで良いかい?」
リョウタ
「いいよ、足りなくなったらまた捕るんだからね」
ロコ
「じゃあ! ちょっと行ってくるよ!!」
そう言って駆け足で海に飛び込んでいく。
エリシェ
「リョウタさん、これでメロウ族の事、分かればいいですね!」
リョウタ
「なんであんなに悩んでるんだかわかんないんだよなぁ」
エリシェ
「……分かってやってるんじゃなかったんですか?」
リョウタ
「何でも分かるなんて事はないよ、誰だって」
エリシェ
「そうなんですか……?」
リョウタ
「答えが分かる事なんて、あるハズないんだ」
エリシェ
「でも、メロウ族って未来が見えるって言ってませんでした?」
リョウタ
「……それが返って悪い事になるのかも知れないね」
エリシェ
「どういう事です?」
リョウタ
「ちょっと先の未来でも、見えちゃうのなら……それは、他人の心が読めるのと似てるもんね」
エリシェ
「それって……」
リョウタ
「もしかしたら……それが原因でメロウ族は孤立しちゃったのかな」




