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エリシェのバレンタイン

 2月14日、本日の天気……雪。


 私はお屋敷を出てから実に半年も帰ってませんでした。


 父はサマナーの仕事を斡旋する為の組織、カードギルドの責任者で、その功績を讃えられて貴族に仲間入りしたのです。


 リョウタさんの世界で言うなら不労所得というもの、これが貴族のもっとも基本的なところなのでしょう。


 本来は元々の収入源があって、社会的に貢献すべきなのですが、私の父は違いました。


 カードギルドという元々他の街では盛んでしたのに私の故郷、エチゴの街ではそれはまだ未開発の分野……。


 つまり、どちらかというと商人に近かったのです。


 この所得と貢献の両方を自分の力で、運営という形に変えて成し得たのがそもそも私が貴族として生まれ変わる時でもありました。


 そうして、ギルドの責任者という立場にあるのに……いえ、だからこそなのでしょうが……私のサマナーとしての活動は父には賛成して貰えていませんでした。


 そうまでしているのには、私の生きていく姿、道というのでしょうか? それが決められている事が納得出来なかったからです。


 私は自分で道を選びたかった……。


 その想いは、マキナとの出会いや、リョウタさん、ギルドの皆さん……色々な立場の方に会う事でより一層強くなるばかりです。


 特に、リョウタさんは不思議な方でした。


 私にとっては……異世界の事を知るという事や、サマナーと冒険者という立場の違いもありますけれど……それ以上に、何かぶつかってはそれを越えていくという姿が、私には眩しかったのです。


 そう、それだけの話です。


 ……だから、私がチョコレートを渡すという行為には、全く、裏に意味なんてものはないんです。


(マキナがあんな事を言うからだわ……)


 あんな事というのは……つまりリョウタさんとの仲の事です。


 あれは女王様との密談、リョウタさんが女王様にゲームを持ちかけた時のお話。


 マキナ

(エリシェ先輩、ヤキモチなんて焼かなくてもリョウタさんは、絶対、先輩の事好きなんですから心配要りませんよ)


 エリシェ

(え、ちょっと! そんなつもりはないんです!!)


 女王様

(……そうですか、エリシェ……ならわらわがリョウタと契約する事になったとしても、全く関係ないのですね?)


 エリシェ

(どうして女王様までそんな事!!)


 リョウタ

「あの、俺にも聞こえるように話してくれないかな?」


 キッと3人で、今は大事な話なのでちょっと待っててくださいと、目で訴える事になり、更に会話は進みます……。


 マキナ

(でも、女王様の言うことも一理ありですよ、先輩)


 エリシェ

(どうしてですか! 私が召喚したのですから……)


 マキナ

(それはそうですけど、相手も結局は同じ意思を持った人間ですから)


 女王様

(……そうですよ、召喚しただとかそういったものは信頼には関係ありません)


 エリシェ

(でもですね……私を選んで来てくれたから、ここにいる訳ですし……)


 マキナ

(それじゃあ、こうしませんか? 今からまたリョウタさんを試してみるんですよ)


 女王様

(ふむふむ……そうですね、今度はマキナのゲームに付き合ってみたくなりました)


 エリシェ

(あああ……でも、試すって何を試すんです?)


 マキナ

(もう1回、ここに居る私達でリョウタさんに契約を持ちかけるんですよ)


 エリシェ

(そんな!! それじゃあ何だか……)


 マキナ

(先輩はリョウタさんの気持ちを知りたくありませんかー?)


 女王様

(いいではありませんか、これもゲームです)


 女王様はゲームという言葉が気に入ってしまったようですね……。


 エリシェ

(……私は……もうそれでいいです……)


 半ば、少し自暴自棄になっていたかも知れませんね……。 でもその時、結局は私の事を選んでくれました。


 あの時、少しホッとしたような気がしました。


 でも、だからと言って……恋だとかいうその発想はまだ持てませんでした。


 それから日が経つ毎に、リョウタさんの事は気になって来ているのは確かなのですが……。 尊敬とか、未知の者への興味だとか、自分の気持ちなのに自分の事なのに分かりません。


 チョコレートを渡す。


 こんな簡単な事を想い悩んでしまうなんて、もしかして……。


 リョウタさんの世界ではこれが当たり前で、こちらの世界にも当然の様に浸透しているこのバレンタインデー。


 手作りというのは……時間も無いですし、無理ですよね。


 お店でチョコレートを買って、リョウタさんに渡す……それだけです。 それだけの事の筈なのです……。



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