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第1話 その3

 エリシェの見せた暗い表情は一体なんだったのか? そんな想いを抱えながら聞けないままチュートリアルを終わらせていよいよ本番、初戦闘の開幕です。


 次ページでもあらすじを前書きで解説しますので、飛ばして貰っても構いません。

 千年樹行きの便は、定員4名、というか4ペアまで。 ここで初の顔合わせになるどこぞの冒険者も多い。


 俺たち(俺とエリシェ)はもちろん初陣で、戦闘に慣れる為と、カードロストした時の為の保険としてここへ来ている。 しかし、他のメンバーはどんな意図があってここに参加しているのだろう?


(ねえ、エリシェ)


 小声で尋ねてみる事にした。


(なんです?)


(他の冒険者達って、なんでここに来てるのかな?)


(ああ、それはカードの再生の他にドローも期待しているのでしょう)


(え?! ドロー?)


(カードギルドで再生は出来ますけども、それには1コイン必要なんです)


(ふむ?)


(ここに来て再生すれば、再生と1枚のカードのドローで同じ1コインでも有効に活用出来るんですよ)


(……なるほどね)


(他にも微量ではありますがスコアも稼げます)


(スコア?)


(はい、1万点で1SP、これが後々のスキル取得に必要になってくるんですよ)


(へぇ! 面白いね!)


(このステージの目標はリョウタさんはこの馬車の護衛ということになりますね)


(なるほど……?)


(苦戦するような事はないと思いますので、あとは実戦です)


(うう、緊張してきた)


(そうだ、戦闘中も会話出来るようにこのリングも渡しておきますね)


(……これをはめるとテレパシーが使えるの?)


(はい、察しがいいですね)


(魔法のアイテムでこういうのは常套だもんね)


(……そろそろ、ゴブリンが生息している区域に入ります、戦闘準備を)


 周りをみるとそれぞれが用意をしていて、召喚を行っているペアもあるようだ。 俺も召喚しておこう。 


「それ!」


 召喚ボタンを押す。 剣士アルティシア、弓使いローガンを召喚して周りを見渡した。


「レーダーに注意していてくださいね」


「ほい、了解」


 レーダーに反応は、まだない。


「シルフの加護がある限り、馬車から離れたとしてもだいたい戻って来れます、アルティシアさんに無理をさせないように、遠距離を保って攻撃するといいですよ」


「なるほど……りょうか、い?! 来た!」


 3時の方向からゴブリンが4匹ほど。 レーダーで見る限りは今のところ4匹だ。


「馬車がやられてはどうしようもありません、迎撃してください」


「よし!」


 ゴブリン目掛けてダッシュボタン! と、焦って2回押してしまった。 これは物凄いジャンプ?! 


「離れすぎです! もう少し戻って、馬車の近くに!」


「うわ、とと、これは……」


 ゴブリン目掛けて落下していく。 このままじゃ4匹のど真ん中に落ちる事になるぞ?! 急いで何かボタン……とりあえず指示か?!


 指示ボタンを2回押して2人の行動を護衛にセットする。 そして着地。


「大丈夫ですか?!」


 着地の間際から弓とボウガンによる攻撃が開始されていた。 俺だって!


「くらえ!」


 Aボタンでファイヤーボール!! ……まだ弱いけど。


「少し攻撃を当てるくらいで、馬車の方へ戻ってください」


 攻撃は当たった、けども攻撃されてないゴブリンが放置されている。 当然誰かに攻撃を行うわけだが。


「うあ!! 痛いよ?!」


 横から思い切り棍棒らしきもので殴られる。 リョウタHP400→264


 まだ3対4、というか俺がヤバイ。 とにかく馬車の方向にステップ!


「そのままゴブリンの集団の中にいると危ないです、距離を取ってください」


「りょ、了解!!」


 距離を取るのは容易かった。 シルフの加護が効いてるのだ。


「馬車の前方からゴブリンが10匹、接近中です」


「えええ?! ちょ、展開早くない?!」


「大丈夫です、そっちのゴブリンはもう放っておいても馬車には追いつけません」


「え、俺の迎撃は無意味?」


「いえ、足止めになりましたし、無意味にはなってません」


「くぅぅ、とにかく戻るよ」


 馬車へ戻るのもひとっ飛び、これは爽快だ。 でも俺だけダメージを負っていてなんだか格好悪いような気がした。


「ねぇ、キミ、ここは初挑戦かな?」


 プレイヤーの1人が話しかけてきた。 


「は、はい」


 ちょっとどもる。 ますます格好悪い……。


「まあ、あとは俺らに任せといて大丈夫ぽいよ」


「え? いやでも……いいんですか?」


「いいよいいよ、それより、ゴブリン3匹は撃破しときたいところだったねぇ」


「あ、そうなんですか?」


「んー、そうしないと多分、1万点に届かないんじゃないかと思ってね」


「!!」


「ああ、でも働きとしてはまあまあ良かったと思うし最初ならこんなもんだって」


「倒せてれば良かったんですねぇ……」


「大丈夫だって、足は引っ張ってないからさ」


「あ、そうなんですか?」


 ちょっと気が楽になった気がした。 でも……


「んと、今回はゴブリンが陽動作戦をしかけてきたよね」


「えっと……最初のゴブリン4匹ですか? ……俺はじゃあ陽動に引っかかったって事に……」


「あああ、いや! そうじゃなくてさ、結果だけ見れば陽動に割いた戦力は1チームだけで、そこで足止めしてくれたから前の10匹にも余裕が出来た訳だし」


「うーん……でも、足引っ張ってる感じがまだ否めないというか……」


「えっとね、つまり、これはチーム戦だってこと」


「えっと?」


「今回は俺が最初に召喚して、弓を1発前方に発射したんだけど、その頃にキミは召喚して最初のゴブリンに突っ込んだ」


「はい」


「で、それを見た俺と他の2人は馬車を警戒することにしたの」


「なるほど……弓を前方に撃ったのはなんでですか?」


「それはまあ、後方で支援しますよって合図かな」


「そうするとどうなるんですか?」


「他の2人が近距離戦を仕掛けやすくなるんだよ、背後を取られそうになったりするときに、遠距離からこっちに注意を向けさせる事でね」


 と、ここまで聞いただけでさっきの4匹の事が頭を過ぎる。 つまり、俺はもっと手前に落下して遠距離攻撃で注意を引く。 それに引き付けられるゴブリンを横からアルティシアがメッタ斬りにする。 俺はまたここで距離を取る……ゴブリンがまだこっちを追ってくるなら背後からアルティシアが……という、コンビネーションか。


「……色々、参考になりました」


「ああ、うん、別に俺もそんな上手いってわけじゃないんだけどね」


「いや、戦術だけでも全然違ううだなって分かりましたよ」


「……次に会うときはもっと楽しめそうだね」


「……はい! また今度よろしくです!」


 話してる間にもちょいちょいと弓を挟んでゴブリンの攻撃思考を揺さぶる姿は、今の俺からしたらもう超ベテランに見えた。


 そして俺以外は1~3万点くらいのスコアを稼いでいる。 まだまだ先は長いって事を思い知らされる初陣となるのでした。



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