第1話 その2
山岡龍太はアーケードゲームでひと目で気に入ったゲームのアルカナサバイバルをやり始める。
知的でメガネのそれでいて清楚可憐なキャラクター、そしてヒロインであるエリシェをナビゲーターとして、選び自分をカードの戦士として登録した。
自分のカードは弱いが、ドローしたカードはかなり使える強いカードだった。
最初の目的地千年樹へ向けて馬車を手配する。
まだ主人公弱いままです。 無双が好きな方は次のページにお進みください。
「手続き終わりましたよー」
エリシェが笑顔で近づいてくる。 さっきの不安げな顔はなんだったんだろう? それももう少し打ち解けたら分かるのかな?
「よっし! 初の冒険だ!」
「初陣、頑張ってくださいね!」
「そうだ、カードの使い方とかよく分からないんだけど、今のうちに教えてくれるかな?」
「はい、いいですよ……と言っても、そんなに難しい事はありませんよ」
「編成っての、これは今は関係なさそうだね」
「はい、もう1枚、カードを入手した時に必要になってきますね」
「ふむふむー」
「戦闘は必ず3人1組で編成されます、なので自分と、他の2枚のカードでそれ以上の変化は今は出来ませんね」
「じゃあ、ひとまずこれは置いといて、ボタンの確認かな」
「はい、では軽く説明しますね……まず、基本的な攻撃からですね」
「ボタンが6個あるよ」
A B C
D E F
と、こんな具合に並んでいる。これは格闘ゲームが流行った頃の名残なのかも知れない。
「Aボタンは遠距離攻撃ボタンですね、それからBボタンは近接攻撃用のボタン、Cボタンは走る、ジャンプするといったアクションを行う感じになります」
「……まず、どこかで試したいね」
「そういう事なら練習場もありますよ」
「やっぱり、一応操作に慣れてから戦場に行きたいよ」
「そうですね、ではこちらです」
ギルドホール内、練習場。 中は見渡す限り壁で出来ていて、中央にカカシの様な物が設置されている。
「カカシ相手に練習……だよね」
「はい、ここは結界も何重にも張られてますし、どれだけ暴れても音も漏れないです」
「よし、じゃあ早速攻撃だ!」
「えっと、その前に移動とターゲットボタンについても説明しておきますね」
「移動? ああ、何となくわかるよ」
と、レバーをグリグリさせて自キャラを移動させてみる。
「あ、いいですね! ……でも、そこでストップ!」
「え?!」
言われるままにピタッと止まる。
「今の状態で遠距離攻撃ボタンを押してみてください」
「……ポチッとな」
壁に向かって炎の玉が発射された! パーン、とやや軽めの音と共に炎の玉は弾けとんだ。 炎の玉……これは差し詰め……ファイヤーボールって名前だったりしてね。
「これが、杖を選んだ結果ですよ! 派手だし格好いいですよ!」
「え? そ、そう?」
「でも、これはカカシに命中してませんね」
「そりゃあ横を向いたんだから……」
「そうなんですけど、次にターゲットボタンの説明をしますので、これと組み合わせて攻撃に慣れてみましょう」
「はい、よろしくー」
「では、カカシの方へ向きを変えて、カカシを良く見てみてください」
「……カカシを正面に……おや?」
黄色の小さい丸がカカシに描かれて点滅している……
「黄色のターゲットの印が見えますか?」
「うん、見えるよ」
「今度はその状態でAボタンをどうぞ」
「それっと!」
予想通りの展開だけど、カカシに炎の玉が命中した。
「はい、どんどんいきますよ! 次はそのままの向きでターゲットボタンを押してください。 Dボタンですよ!」
押したら黄色の丸い印は赤色に変化した。 これは多分……
「ロックオンて事かな?」
「そうです、その通りです! そのまま動いたりしてもロックしている限りターゲットはそのまま固定されます」
だいたい分かってきたぞ……つまり、走りながらでも、視線はカカシに向けていて、魔法を放てばそれはカカシの方へ向かって飛んでいく。
そのまま少しの間攻撃を繰り返してみて分かったのだが、自分の移動速度があまりにも遅い! 遅すぎる!
「なんだか、ちょっと遅すぎる気がする……」
「え? 何がですか?」
「ああ、移動とか走ってるのになかなか進まない感じがさ」
「それでしたら……召喚のボタン、Fボタンを押してみてください」
「お、召喚か! ついにゲームの肝だな!」
と、Fボタンを押してみる。
銀色と金色の輪っかが、俺の真横に2つ現れる。 これが召喚か……!
「先ほど入手したカードです」
「これは……間近で見ると大迫力だ……!」
金と銀の輪っかが、上にスライドしていく。 そしてその輪の中から足元が見えてきて……ちょうどカメラを足元から全身に向けていくような感覚で召喚されたキャラクターがそこには出現していた。
「召喚完了ですね! どうですか?」
「うん、格好いいよ!」
「……えっと、そうじゃなくて移動とか、早くなってませんか?」
「!!」
軽い。 自分の体重なんて感じないくらいに。 壁までどれくらいで移動出来るんだろう? と、少し足に力を入れる。
ドスン!!!
「ああ! だ、大丈夫ですか?」
思いっきり壁にぶつかってしまった。
「イテテって……あんまし痛くないけど、これは……絵的に痛いね」
「そうですか……痛くないのならいいですけども」
この微妙な空気……。 話題そらしたい。
「えっと、これがカードの効果?」
「あ、はいそうです、正確に言うと[シルフの加護]があるからですよ」
「ん? あー……なんか見たな……剣士の方のカードだっけ」
「そうですね、剣士アルティシアさんのスキルに設定されてますね」
「なるほど……これはメンバーに適用されるのか……」
「その通りです、他にも、ローガンさんのスキルで[感知]がありますので画面右上の方にレーダーの様な物が見えますか?」
「ん? ああ、あるある」
「この部屋では、カカシはエネミーとして判別されるようになってますから[感知]を使ってカカシの位置を確かめることも出来ます」
「なるほどね……これだけの移動速度って……ちょっと慣れないとさっきと違いすぎだな……」
「はい……あ、でも、召喚解除する前に、指示ボタンも試してみましょう」
「おお、残るはこの真ん中のボタンか」
「はい、Eボタンで指示を選ぶ事が出来ます、まずは指示ボタンを押しながら、右、と入力してみてください」
Eボタンを押しながら右……アルティシアに水色のカーソルがついた。
「アルティシアに水色のカーソルが付いたみたいだけど?」
「はい、その状態で何度かEボタンを押してみてください」
突撃、護衛、後方支援、集合、……選べるのはこの4つのようだ。
「試しに突撃で……」
と、選んだ途端に、アルティシアがカカシに向かって突進している。 これが突撃か!
その攻撃は俺のファイヤーボールとは比較にならない激しさだった。 ザク! ザクザクザクザクザクザク……これは、いったい、いつ攻撃が終わるんだ?
物凄い手数でカカシを切り刻む。
「Eボタンと左でローガンさんですね」
言われて押してみる。 突撃っと。
「……これは……」
カカシへ間合いを一気に詰めて、パシパシっとパンチを繰り出す。 あれれ? しょぼいよ? アナタ、そこは弓でしょうよ!
「リョウタさんの立ち位置くらいで射撃させる場合は、護衛を選んでください」
Eボタンを押して護衛を選んでみた。
……2人とも下がって来た。 そして3人で並んで射撃に移る。 そうか、最初に言われた通り、Eボタンと左だったらローガンだけ下げる事が出来たのかな? レバー操作なしでEボタンの場合は2人にいっぺんに指示を出せる……と、そんなところか。
「だいたい分かったかな」
「そのようですね」
「まあ、あとは実戦(実践)あるのみ?」
「はい、もうすぐ馬車の手配も終わる頃です」
かくして、ついに初陣となるのだが、これからが本当の始まり。 まだチュートリアルが終わったに過ぎない。
俺たちの戦いはこれからだ!!