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第3話 その3

「ナ! ……マ・キ・ナ、です!」


 騒動に遅れて登場した、彼女の名はマキナ。 ああ、マキノさんだっけ? よろしく……と挨拶した直後のセリフだった。


 リョウタ

「ああ、ごめん、あっちの冒険者がそんな風に呼んでたから」


 マキナ

「いえ! その……助けて頂いてありがとうございます」


 エリシェ

「マキナ、大丈夫? だんだん酷くなってるみたいに見えたけれど」


 マキナ

「エリシェ先輩……心配してくれてたんですね」


 エリシェ

「当然じゃない。 しばらくは私も手を貸せそうよ」


 と言って視線をこちらに向けるエリシェ。


 リョウタ

「ああ、俺も大丈夫。 俺がいる間ならあんな奴らは問題にならないよ」


 マキナ

「……!! 本当ですか?! やったーーー!!」


 エリシェ

「良かったわね、マキナ」


 マキナ

「はい! とりあえずあがってくださいよ、お客さんまた戻ってくるといいなぁ」


 リョウタ

「うーん、すぐ営業再開ってのは気が早いかもなぁ」


 エリシェ

「え、どうしてです?」


 リョウタ

「根本的な原因を突き止めないとね」


 マキナ

「そんな事、出来るんですか?」


 リョウタ

「すぐに出来る訳じゃないけど、まずは情報を集めないとな」


 ゲームの攻略。 と言えばググったらすぐだろ? なんて思う人が世の中にはなんと多いことか。 でも、俺はそれではゲームが楽しめないと考えている。


 自分で考える力を養うのも、ゲームの良いところなんじゃないのかと、そうして自分で考えて解けるからゲームって面白いんじゃないのか?


 もちろん、自分の意見を他人に押し付けたりはしないけども。


 俺のゲームスタイルは、まずは自分でやってみる。 詰まったり悩んだり、それもゲームのうちだと思うからだ。


 エリシェ

「情報ってどうやって集めるんですか?」


 リョウタ

「人手が足りない、まずは……ひと休みしようか」


 マキナ

「ひと休みですか? だったらお風呂などいかがですか?」


 リョウタ

「風呂?!」


 マキナ

「はい、うちの父が即席の露天風呂を作ってくれましたので」


 ……この3人で入れる訳もなく、俺は残る事になった。 代わりに父が登場し、話をきいてみる。


「ここは温泉プールだったんですねぇ」


「ええ、私の代で3代目になりますかね」


「……ここは温水を独り占めするような施設じゃありませんよね?」


「そりゃあ当然ですよ!! 冒険者様!!」


「ああ、その、冒険者様っての言われ慣れてないし、リョウタでいいですよ」


「いえいえ! ウチのこと守って貰ってますんで……」


「まあその、頼まれたし、約束なもんで」


「ありがたい事です、エリシェ様にもどう感謝していいのやら」


「エリシェ……様?」


「おや、知りませんでしたかな? エリシェ様は貴族のお嬢様ですよ」


「ええ!! そうだったの?」


「はい、娘がなんぞ失礼な事しないかとヒヤヒヤしてますよ」


「そっか……敬語使われてたから、そんなに身分とか分からなかったなぁ」


「エリシェ様も色々あったと聞きますが……詳しくは知りませんです」


「……そうですか……ところでその、なんでここがそんなに狙われてるんですか?」


「ええ、まあ、1度逆らっちまったもんで目を付けられたってんでしょうかねぇ」


「逆らうって?」


「土地を売れと言われましてね、私にはこのウチと娘しか居ないもんですから……それは聞き入れられませんでした」


「そうでしたか……」


「ウチの娘なんか、何があったか旅に出たいなんて言ってますが、私は最初は反対してたんですよ」


「今は反対じゃないんですか?」


「そりゃあ、今だって反対に決まってます、でも……」


「なんですか?」


「最初は学校に通うのはこれからの時代に必要だからだと言われて応援してましたが、それが旅の為の召喚術だったんですよ」


「……子供持ったことないんで、分かりませんけど、可愛い子には旅をさせろって言うじゃないですか」


「……そうなんですよ、旅の為にって習った召喚術が、街の荒くれ連中を押し返すのに必要になってる……」


「複雑なんですね」


「ええ、私は反対したのに、反対した召喚術のおかげで今はなんとか追い出されずに居るんですから」


「……なんていうか、この辺を統治されてる方って、この治安の悪さを何故放って置いてるんでしょう?」


「女王様ですか?」


「女王……? 女王様?」


「はい、私らの国を治めてらっしゃる方です」


「何か統治の方法に問題があるのかな」


「そ、そんな大それたことは口に出来ません!」


「え、あ、スミマセン。 分からなくって」


「いや、でも、街の事で困ったことがあれば、ギルドが対応してくれてますので」


「ふむ……じゃあ実質、ギルドが治安の維持をしてるって事ですか?」


「ギルドは私達のような民間人同士の小競り合いには干渉してきませんし、今回の事はどうしようもないのだと……」


「……うーん、こうなるとやっぱり統治してる女王様の……って、おもてに誰か来ましたね」


「さわがしいですな」


 玄関に出てみるとそこには……シックザールの姿があった。 俺や主人の顔を見るなり、


「すまなかった!」


 と、頭を下げてくる。 やっぱ根は悪い奴じゃない。

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