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第13話 その8

 真夜中、森を走る馬車とその中にリョウタさんと私の姿がありました。


 少し前……一旦、北シナノの街まで馬車を使い、そしてまたギルドに行って大至急で馬を用意します。目的地は千年樹でした。どうして千年樹に行こうかというと、それは私の提案があったからです。


 提案の内容と言うのは……


「もしかしたら、リョウタさんはこの世界でやり直したい、私を優先してくれるという事ですか……」


「そうしたいけど、俺なんて……この世界の常識もまるで分からないし、だから、せめて女王騎士団長の地位が欲しかったんだ……」


「……そうですか……でも、準優勝ですし、女王騎士にはなれると思いますよ」


「え? そういうもの……?」


「フェリドさんがこれから騎士団長になる訳ですし……そこは大丈夫だと思います」


「あ、はは……、そっかー……でも、この世界の住人になるなんて事は出来ないよね……」


「それなんですけど、もしかしたらという可能性がありませんか?」


「可能……性?」


「あの、大鷲オオワシの時のエルフさんですよ……なんだか不思議な方でしたし。それに生きる場所を変えたとか言ってましたよね?」


「あ、言ってた……かも?」


「その可能性に賭けてみませんか?」


「俺が生きる世界を変える……この世界で生きられるって事?!」


「分かりませんよ、でも、その、リョウタさんが良いのでしたら……」


 これが私の提案でした。

 

 答える内容はもちろん「この世界で生きられるなんて」と期待を大きくするばかりです。その会話の直後から、馬車を手配してすぐに北シナノへ直行する事になりました。――――リョウタさんはこの世界の住人になれるのでしょうか?


 ペット依頼の時……あの時もこんな真夜中でした。


 夜に千年樹を訪れると会える……そんな規則性なんてあるのかないのかは分かりませんが……あの時のエルフさんはちゃんと目の前に現れてくれました。


「どうしたのですか? こんな真夜中に……」


「あの、俺……! この世界の住人になりたいんです!」


「突然ですね、あなた方は……前もそうでしたね」


「ああ、大鷲の時には世話になったね……あの時みたいに、俺をこの世界に引っ張り込むことって出来ないかなって思って来たんです」


「……いいでしょう、ですが2度と戻れませんよ? 構いませんか?」


「そんなの分かってる!! 出来るのならお願いします」


「あなたはこの世界に逃げ込むような……そんなつもりで来たのではないですか? だとしたらあまり勧められませんがね……」


「……まあ、そうかも知れないけど、でも決めたんだ。この世界だって同じように辛いこととかあると思う、でも、それでも! 俺は決めたんだ……!!」


「でも、……その家族とか、友人の方達は……私、やっぱりリョウタさんには現実を捨てるような事はして欲しくないように思います」


「エリシェまで……? んー、でも、俺ひとり居なくなっても全然変わらないよ、世の中。それにこっちの世界の方が断然!! 面白そうなんだよ、やっと見つけられそうな気がしてるんだ」


「リョウタさん……いいんですか?」


「うん、いいよ、俺はこっちの世界で生きていたいんだ」


 ……私も、実は家族とはあまりうまく行っていませんでした。でも、捨てるというような事は全く浮かびませんでした。でも、リョウタさんは……すぐに決めてしまった。もしかしたら……いえ、私はリョウタさんの言っていた事をまだ軽く見ていたのかも。


 リョウタさんは本当に心が壊れてしまったような事があると言っていたのが思い出されてきて、今頃になってその言葉の重みが分かるなんて……。


 元の世界に全く未練がないなんて、もしかしたら本当に心に傷があって、それは治らないようなもの?


 リョウタさんは笑顔で、全力でこの世界に馴染もうとしています。このまま話を続けたら、本当にこの世界の住人になってしまう。待って欲しい――――。


 そう言おうとしましたが、リョウタさんがあまりに嬉しそうで……。


 もしかしたら、私が思っている以上に心の奥底に傷を負っているのかも……。そう思った途端にリョウタさんの笑顔は、何故だか寂しそうに見えてしまいました。何か漠然とした心の闇の中で、必死に笑ってごまかそうとしているような。


 いえ、違いますね。私がもっと理解しているべきでした。


 私はリョウタさんが好きだから……。リョウタさんが元の世界に全く未練を残さないなんて事は、つまりもうどうしようもなく傷ついていて、分かりにくいけど誰かの救いが必要なんだと、そう思います。


 だったら、私が支えになる。そう思えた時には自然にその言葉が出てきました。


「ずっと一緒に居ましょうね」


「エリシェに言われると本当に嬉しいなぁ……」


 私が隣りに居続けることで、リョウタさんが救われるのなら、私はそれでいい。それしか出来ない。この人と一緒に、今度は私も乗り越えよう。


 私達はお互いに必要な存在なんだ……。




「私、リョウタさんを召喚出来て本当に良かった……!!」

「俺も、喚ばれて本当に感謝してる……ありがとう」



 

 ――アルカナサバイバル 完――

ここまで読んで頂きありがとうございます!!

最初の作品が完結したことで、少し前に進めたような気がします。

ちょっとした設定とイラストの紹介などを次ページにて行っておりますので、

よろしければ立ち寄ってくださいね!

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