第13話 その5
決勝までは楽に来れた事、これが意外だった1つ目でそれと、フェリドが思った以上に苦戦していた事。この2つが意外な出来事だった。そしてその試合内容だが……明らかにフェリドの表情に余裕がない。
そして時折見せる悲痛の表情……どこか怪我でもしたのだろうか……?
冒険者でなければ……治療もままならないという事なのか……?
こんな中、決勝戦が開始されようとしている。
「それでは決勝戦を……」
「ちょっと待ってください!!」
思わず口の方が先に動いた。だが、もう喋りながらでもこの試合を中止したい。多分あれは……麻痺系の攻撃を受けているように見える。とにかく喋り続けるんだ!!
「このまま勝負する事は、この闘神祭自体を否定してしまう、そんな気がしてなりません!!」
「どういう事ですか? リョウタ」
女王様もこれで勝てると思って居たのかも知れない、誰がどう工作してるのか分からない。だが。
「私には女王様の婿になる人間の、正当な者を見極めるという極めて重要な役目を与えられていると思っています!! ですから、このような、見るからに衰弱しているような者を相手にする戦いでこの闘神祭を終わらせる事は出来ません!!」
キッと見つめ返す。女王様に目を向けて、目で訴える。
「リョウタが言うのであれば、そうしましょう、わらわもこれが最後などと納得している訳ではありません」
「では……」
「我、アルシュタートの名の元に闘神祭の決勝の延期を言い渡します、明日、この時間までに体調を治しておくように」
会場は肩透かしをくらったように静まり返る……だがこれでいい。指でフェリドに医務室に行けと合図を送り、俺はフェリドの出てきた入場口に向かって突き進む。
(エリシェ、医務室にフェリドが行くからそっちに待機してて!)
(分かりました、何かあったんですね)
エリシェは無条件で俺を信用してくれる。……この無条件というのがどれほど有難い存在なのか。自分の損得なんて関係なしに、文字通り無条件で味方なんだ。こんなに嬉しい事はない。
フェリドの入場口から何かわからないかと、駆け足で付近の人間を見渡す。見慣れない貴族の姿や、イワンの姿もあった。……イワンはフェリドに負けているはずだが……何故ここにいる? だが決定的な証拠というものは見つからない。諦めて医務室に行ってみる事にした。
エリシェ、フェリド、そして、女王様の姿もここにあった。
「リョウタ、ここは人払いをさせています、事情を説明してください」
「そうですね……私からよりもそこのフェリド殿からお聞きしたほうが早いかも知れません」
「……すまんな、俺がこんな事になっちまって……」
「私も、そのどうしてリョウタさんがあんなに真剣に試合の中止を申し出たのか気になります」
「うむ、その恥ずかしい話だが……子供に差し入れをされてしまってね、まさかそれがこんな効果を持っているなんて思ってもいなかった。……毒の味くらいは見分けられると思っていたのだが……」
「毒?!! そんなものを差し入れにされてたのですか?!」
「俺も、この国に来て日が浅い……毒がどんな味なのかなんて、分かる訳もなかった……俺は、結局あれでやられてもそれまでだったと思っていた」
「リョウタ、そなたは何故このフェリドという男を助けたのですか」
「それは俺から説明させてくれ、代理人殿には本当に感謝している。……女王様に直接話が出来るようなこんな機会を作ってくれたのだからな」
……それは、漂流者の保護と支援、そして働き口など全てをこの国で率先して行って欲しいというフェリドの想いであった。この世界にある、不遇な対応や漂流者の末路など。女王であるアルシュタートには耳に入らないような事であったようだ。
「わらわの国にも、そういった者たちが居ると……そう言うのですね」
「ああ、俺がこうして大会に出られたのもほんの偶然だったが……代理人殿に偶然お会いしましてね、そこで全てをお願いしてありました」
「リョウタさん、そんな事があったなんて……私にも一言相談してくれればいいのに」
「いや、これは……どう話していいのか分からなかったし、それにフェリドさんなら勝ち上がってくると信じてましたから」
「俺は、まあ女王様に話を聞いて貰えただけで充分なんだが……やはり、身分というものが手に入るのなら、もっと多くの事が出来る、そう思えた……だから、やはり決勝で勝ちたいという気持ちは変わらない」
「わらわを后にするという事よりも、そっちの事の方が大事なのですか?」
「俺にとって身分は、命より重い。そんな国から迷い込んだ漂流者なんだ。それにこんな美しい女王様なら婿という形とは言えこれ以上ない話だ。それを踏まえて聞いてくれ。俺は本気で婿入りを考えている、そして俺のやろうとしている事が、この国に発展をもたらすとも考えている」
「……つまり、国もわらわも、漂流者も、全部背負って、わらわの婿になると言うのですね……」
「私からもいいでしょうか? 今回のフェリド様への攻撃は、それは貴族達の嫌がらせにほかならないと考えています……貴族達の嫌がらせについては身にしみてますので……」
「貴族達ですか……わらわもどう対処してよいやら迷っていました」
「このフェリド様という方には、その貴族達への牽制にもなるように思えるのです」
「貴族達の思い通りにならない存在が女王騎士団長になる……確かにそうですね」
「私の率直な意見ですが……このフェリドという男は、女王様に相応しい人物だと私が勝手に判断したという部分もあります」
「わらわにも体裁というものがあります……闘神祭で勝てるようなら、その器に対して礼儀を見せなくてはならないですね」
「……正々堂々と、戦って勝てたら、俺は女王様、アンタを迎えに来る」
俺は負けても、いや、負けた方が……。国の為にもなるのか。だからと言って、ワザと負ける八百長をやれる程の腕はない。このフェリドを相手に。
女王様、もう答えは出ている。でも闘神祭はどうしても必要な儀式だ。
手は抜けない、それどころか普通に戦っても勝てるかどうか分からない。だが、今回の事でようやくモヤモヤとした胸の中にある支えがとれたような気がした。




