第1話 「一目惚れ」
あらすじだけ追って行けるように前書きである程度解説してしまおうかと思います。いずれ改稿出来る日までこのままです……。
ゲーム感覚という事で、最初は弱い主人公。そんな主人公がある程度成長して強くなるのは3話目からになります。次ページの前書きでこのページのあらすじを解説しますが、チュートリアルも楽しいだとか、RPGの始めたての頃が楽しいと思う方は楽しめるかも知れません。
そうでない方は次のページにお進みください。
は? 毒矢だろう?! まだ見つかってないってそりゃあ……大丈夫だと信じて探すしかないじゃないですか! だけどもなぁ、普通に考えりゃあ……昨日すぐに見つけないと体力が尽きるだろ? わかってる!! ……あああああ!! もう!! エリシェ!! 返事してくれよ!!
ゴチャゴチャのセリフが頭の中でこだまする。 これは夢だ。 目を覚ましたらきっと平凡な日常に逆戻りだ……。
「ようこそ! 異世界からの冒険者さま」
という突然のセリフとともに目の前に現れた謎のコスプレガール。知らない部屋に魔法陣。
ちょっと気が動転した。
「いやあ、私を選ぶなんて嬉しいです! これからは私がちゃんと冒険を案内しますから安心してくださいね!」
ここは……どうやらゲームの中のようだ?
「どうしたんですか?とてもお困りの様子ですが……」
そりゃそうだよ。 突然の見知らぬ天井になんか悪夢とか、「お困りの様子」なんて言われてもなんの気構えもなしに目を覚ましてすぐがこれだったら、まず大半の人間のとる行動なんて決まってる。
まず、夢だと思うだろう。その後に眠れない事を悟って目の前の人に八つ当たり。なんてのは格好が悪いのでやらないけど……。
でも待てよ?
選んだとか言われたな。 私を選んだとか? ……なんの話?
落ち着いて考えてみようと思ったところで
「よかったらお名前を教えてください」
と、名前を聞かれた。 ……というか日本語通じるって事だよね。喋れてるし。……そう思ったら先に口が動いてしまった。
「ここは日本ではないのですか?」
思わず敬語になった。 初対面なんだし、基本基本。
「ここはジパンヌという国の、エチゴという街です」
[ヌ]?ジパン[グ]じゃないの?!てかちょっぴり日本な感じ……?
……と思った自分がバカに思えてきた。
「ほぼ日本という国と変わりありませんよ……言葉だけならですが」
「え? 言葉だけ?」
また考えるより先に言葉がこぼれてしまった。ちと急展開すぎて頭がなかなか追いつかない。
追いつかないなりに思考を巡らせる。目の前の女の子だが、確かに選ぶとすれば自分のストライクゾーンから考えてだいぶ近い感じ。
「……あの?」
「あ、ごめん、いきなり考え込んじゃって……、俺、山岡って言います、
山岡龍太、リョウタでもヤマでも呼ばれてます」
「あ、はいよろしくお願いしますね!」
お互いに礼をして、言葉を続ける。
「えっと、まだ全然状況がわからなくて……、俺ってなんでここに居るの?」
唐突も過ぎたかもしれない……言葉にしてしまった以上はもう遅いのだが。
「あら、覚えてないんですか?」
「はい、スミマセン」
反射的に謝ってしまった。THE日本人て感じだろうか。
「ちゃんとメニュー画面見ててくれないと、説明が長くなってしまいますね」
「え? メニュー画面……?」
少し思い出してきた。俺はゲーセン通いのただのサラリーマン。
そんな俺の退屈な毎日の中のある日に、このゲームに出会ったのだ。
アルカナサバイバルというゲームのβテスト版。
カードゲームのようなアクションゲームのような……?
ゲームのデモとタイトル画面と、操作を簡単に書いてある筐体、見た感じだけでとりあえずやってみたいゲームだなと。
気軽に1コインを投入したのだ。
以前からやり込んだゲームの会社が制作していて、そのゲーム会社の専用カードも使えた。
……そしてナビゲーターを選ぶ画面に切り替わり、ナビのキャラクターが画面狭しと上半身までをアップにしたキャラクターが現れる。
なになに? 冒険を始めたばかりの初級召喚者? …ちょっと違うかな。
と、次に……おっとこれは!
俺はメガネキャラに弱いからってのもあるが、外見が、まさに理想的であった。
細長い楕円の縁なしメガネでちょっと目も細くて、怒ると怖そうな、でも、デレとのギャップがまた良さそうなクールで知的な目元。
とりあえず候補としておいて、他のキャラもざっくり見てみる。
が、やっぱりメガネでクールな知性的なさっきのキャラかな……?
名前は……
「エリシェ」
「あ、はい!……メニュー画面ちゃんと見ててくれたんですね」
思い出してすぐに名前を呼んでしまった。うーむ……エリシェたん、エリシェちゃん、いや、さん付け?
……いっか、このままで。
「ごめん、なんとか思い出したんだけど、やっぱりなんでゲームの中に意識があるのか思い出せないや」
「まあ、気にしないでやっていきましょう」
「あ、その、どうも……」
「じゃあ、メイン武器を選んでカードギルドに行きましょう」
「え、メイン武器?」
「はい」
と微笑むのはいいが、やっぱり軽く読んだだけのゲームを深く理解出来ている訳もない。
ここは素直に不理解を認めてどんどん質問せねば……。
「武器ってどんなものがあるの?」
「えっと、いっぱいありますよぉ、まず剣、斧、槍、ハンマー、等近接武器と弓、ボウガン、マジックロッド、なんかの遠距離武器、他にも中間距離用のモーニングスター、ムチ、鎖鎌、なんかが代表的ですね」
「おおおおぉ! ……多いねぇって、カードは武器じゃないんだ?」
「それはそうですよ(笑)」
笑われてしまった……。 だが、笑顔が可愛いことをチェック出来たので結果オーライ!
「迷うけど、マジックロッドってのは魔法が使えるのかな?」
「はい、その通りです、私もこれがオススメですよ」
遠距離武器か……でもまあ、大は小を兼ねるってね。
リーチは長いものがいい。安全に戦うってのが好みだ。
……安全な戦いなんて、そんな発想は甘いのかも知れないけども。
「じゃあロッドにするよ」
「はい、それじゃあ次はカードギルドですね」
サクサク進む。アーケードゲームだしこんなもんか。
こうして武器を選んだところで、今まで居た部屋を後にする。
部屋から出ると、モブに囲まれるエリシェの姿があった。
それにしても、このモブの可愛さはなんだ! モブカワだな!
モブが可愛いゲームは良いゲームと相場が決まってる、なんかいいゲームに出会えた予感。
モブ軍団に軽く挨拶をして、建物をあとにする。
廊下、玄関ホール。
目に映るものはとにかく新鮮で美しい装飾がなされていた。
だが、異世界であるがやはり日本に近いという、最初に思った感想から外れることはなく、和風が所々散りばめられている。
カードギルドらしき場所は案外近くにあった。
「ここがギルドホールです、中に入りましょう」
「うん」
入ると、高い天井と広いホールが出迎えてくれた。
「この先のカウンターでカード登録をしてきてくださいね」
「カード登録?」
「はい、カード登録を行うと自分の分身がカードとして登録されます」
「え、俺、弱いんじゃないの……?」
「そうですね……今はまだ召喚されたばかりですから」
「登録はしないといけないもの?」
「それはそうですね……詳しくはカウンター窓口で聞いてみてください」
と、言われるままにカウンターへ案内されていく。
ギルドホールカウンターの受付嬢が、また可愛かった。青と水色の生地が目を引く、制服の窓口嬢……。
「いらっしゃいませ、本日はどのようなご要件でしょうか」
「あ、どうも、初めてなんですけど……」
初めての人に対してはある程度のチュートリアルがあるであろうことを期待しつつ、[初めて]を強調してみた。
「あら、そうなんですか……じゃああまり出来ることはないですね」
「え、そうなんだ?」
「はい、ただカードを登録するだけですよ」
「そっか、じゃあお願いします」
なんだか間の抜けた会話な気がするが、しょうがないよね。
「では、カードに映るグラフィックを作成しますので撮影の部屋へで撮影したら、またここに戻って来てください」
「うお?! 撮影?!」
「そんな構えなくても、後で変更出来ますから(笑)」
エリシェに続き、可愛い笑顔をGETした俺はとりあえず撮影とやらを終わらせるべく、指示された部屋へと進む。
どうせプリクラみたいなのかと思って部屋に入ったら、そこにはヒゲのオヤジがいた。 カメラマンか?
「お、キミ、なんだか初心者っぽい格好してるねぇ」
と、いきなり無礼な言葉を発してくるヒゲ。
「えっと、まあ、そうなんですよ」
「んじゃ、そうだね、キミにとって一番楽しかったことか、趣味でもなんでも自信のあることを思い浮かべて、体の方向そのままでいいから顔だけこっち向いてくれる?」
……侮っていたよ! オヤジ! まさか結構腕利きのカメラマンか?!
「えっと、……こう? ですか?」
はっきり言って自信なんてどうやって思い浮かべるのか……証明写真なら何度か撮った覚えもあるけどね。
「……うん、こんなもんかな」
何度かシャッターを切っている。 手つきが妙にスムーズだ。 だいたい撮られるっての、あんましない事だよな……などと思っていたら。
「それじゃ、これなんかでどうかな?」
と、撮れたものの中から3枚ほど出してきた。 この中から選ぶのか。
「じゃあ、これでお願いします」
「はい、どうぞ」
軽く会釈をして部屋を後にする。 再びカウンターへ。
「撮れたようですね、ではこれをグラフィックにして……あとは杖のレベルが2と」
「これで終わりですか?」
「まずは自分のカードをご覧になってはいかがですか?」
と言って1枚のカードを差し出された。
魔道士リョウタ 杖LV2 HP400 コスト64
普段着に杖、そしてこのザコ丸出しの数字……なんだか恥ずかしい。
「う……む、 あ、ありがとうございました!」
恥ずかしいのでサッサと帰ろうと後ずさり、少し最後のほうはヤケ気味に大声になっていた。 クルッと踵を返したところで、
「あ、待ってください」
「え?」
「あと、もう2枚カードをドローして、手続きは終了ですよ」
……なん……だと?
「えっと、……どうすれば?」
「では、こちらのカードの中から2枚選んでください」
と、差し出されたカードの山。
山というか束という言い方が正解か。
「……はい、引きました」
「これで終了です、これからよろしくお願いしますね」
「あ、はい、どうもでした……」
こっちの世界の常識と元の世界の常識の違いなのだろうか?どうにも初めて来たばかりの場所という事が今更になって不安に思えてきた。
なんで、こんなにみんな自然なんだろう……、異世界人当たり前ってことなのかな?
萎縮気味になりつつギルドホールを後にする。
玄関で不安げに待つエリシェの姿があった。
「エリシェ!」
「あ、終わったんですか?」
こっちに振り向いた時には不安の表情はなく、さっきの明るい口調で、笑顔で出迎えてくれる。
「カード登録終わったよ、使い方とかよくわからないんだけどね」
「それより、どんなカードが貰えたんですか?」
「えっと、……これか」
と、カードを並べてみる。
剣士アルティシア 剣LV4 ボウガンLV2 HP800
スキル 連撃LV3 連射LV1 シルフの加護LV5 コスト260
弓使いローガン 格闘LV1 弓LV5 HP700
スキル 連射LV3 感知LV1 コスト204
……俺のカードとはだいぶ桁違いだ?
だいたい、このスキルってのはなんだ? 選べなかったし……、この流れだと俺のカードも見せる事になるよね……恥ずかしい。
「おお!結構いい物を引けましたね!」
「そ、そう?」
「はい! ではこのまま最初のステージへ行きましょう」
「うっわ、もう実戦か……なんだか自信ないんだけど」
「大丈夫ですよ、最初なんですし、手頃な相手の代名詞、ゴブリンをやっつけに行きましょう」
「お、知ってるよ! 実際のとこは分からないんだけど、よく聞くザコキャラの部類だよね」
「ええ、相手は森の中にまばらに散らばっていますので、うまく行けば目的地までは逃げ切りというのもありです」
「逃げ切り? 目的地?」
「あ、そうでした、ちゃんと説明しますね。 まずジパンヌに訪れた方の最初の行き先は決まっているんです」
「ふむふむ……?」
「千年樹という木がありまして、文字通り1000年間かけて育った木がそう呼ばれます。 そこの木の周りには森の民、エルフが住んでます」
「おお! また聞いたことあるよ!」
「まずはそこを目指します」
「へぇぇ! なんか冒険ぽくなってきた!」
「そこに行けば、カード召喚魔法の再生が出来るのです」
「えっと、カード召喚とか再生? ……単語覚えきれるかな……」
「大丈夫ですよ。 要するにロスト、カードの戦士達がやられてしまった場合に復活出来るようにするための儀式というのが、そこでしか行えないというだけです」
「……ふむ?」
「それでですね、それを行う事で、復活がいつでも出来るようになります」
「ほほー、なるほどね……」
「という訳で、千年樹行きの便にエントリーしてきますね」
「はい、わかりましたー」
今度はエリシェがギルドホールの中に入っていった。 俺は玄関あたりに椅子がいくつも並んでるのが見えたので、そこで待機することにした。




