第三話~ヴァンパイアと人間の運命~
第三話です!ここから、少し変わっていくかも?です!
「白樺くん……」
ここは普通逃げるべきなのに、私の足は地面にぴたっと着いたままだった。
「ばれたか……。これで、過去のことも思い出したか?」
「過去……」
頭の中を詮索すると、あの、初恋の男の子が、私がけがをしたときに、血を舐めていた思い出が湧き上がってきた。ということは……。
「ごめんな、ちょっと痛いかも」
そういうと、私の首筋に噛みついてきた。
「――っ!!」
声にならない悲鳴が出る。確かな痛み。でも、どこか甘いような、錯覚。
「ごめん、瑠華……」
最後に見えたのは、白樺くんの泣きそうな顔。それと、「瑠華」と呼ぶ声。それを確認した後、私は意識がなくなった。
「……ん」
目覚めると、いつもと違う風景が目に飛び込んできた。
ガバッと跳ね起きると、横には白樺くんがいた。
「何で……」
言いかけてやめた。確か、白樺くんがヴァンパイアで、私の首筋に……。そこまでしか、思い出せない。私、どうしたんだろう?
「傷、痛むか?」
「傷?」
白樺くんはとても心配そうにこちらを見ている。首筋を恐る恐る触ると、ぷつっとした感触。牙の跡?でも、対して痛いことは無かった。
「大丈夫。全然痛くないよ」
「良かった」
にしても。どうしよう!今日は土曜日だから、学校の心配は無いけど、親になんて言ったらいいのー!しかも、白樺くんが私服を着てて、すっごいドキドキする!
「どうするんだ?今、朝だけど、家まで送ってく?」
そんなことしたら、余計怒られてしまう。
「一人で大丈夫だよ」
「そうか。それと、瑠――じゃない。中西」
「瑠華でいいよ」
そう。だって、私の初恋の人だし。
「瑠……華。俺がヴァンパイアってこと、周りには黙っててくれないか?じゃないと、俺また親父に迷惑かけるから……」
「うん、いいよ」
迷惑って、何だろう。って、思いながら、私は返事をした。
「じゃ、そろそろ帰るね」
「ああ。それと、俺のことも……真って呼んで」
最後の方は聞き取りにくかったけど、分かった。
「じゃあね。真くん」
私は少し微笑むと、真くんに家から出て行った。
家族には、仁美の家でいてて、ちょっと成り行きで泊まることになって、連絡をし忘れたと、必死で説明した。その甲斐あってか、あまり疑われずに済んだ(その代わり、怒られたけど)。
私はあの日以来、いよいよ真くんが好きだと確信した。仁美にも正直に言い、「今回は譲る」とも言われた。あとは……、告白だけだ。
「ねぇ、瑠華。この漫画貸してあげる」
仁美は漫画コレクターで、恐ろしく漫画を持っており、たまに貸してくれるのだ。
「はい!長編ものだし、悲恋だけど、面白いよ。ヴァンパイアと人間の叶わない恋」
ヴァンパイアと……人間?
「えっ。ヴァンパイアと人間って、付き合えないの?」
「もちろん。人種は別だし、そうそう……ね」
付き合えないの?私と真くんも?確かに、血とか毎日あげてたら、貧血起こしそうだし……。でも、私はそれでも構わない。それに恋に難題はあるはずだし。
「何よ~。まさか、ヴァンパイアに惚れたの?」
「な、わけないよ!」
「だよね~。って、でも白樺くんって、ヴァンパイアっぽくない?」
「え……」
仁美の鋭い突っ込みに、言葉を失ってしまう。
「冗談よ」
「だよね~」
まぁ、内心では、仁美凄いなぁって、思ったけど。
放課後。私は真くんに呼び出され、教室で待っていた。仁美には冷やかされた。でも、放課後に呼び出すってことはアレしかないでしょ?
窓の夕焼けを眺めていると、私の待ち望んでいた人がやってきた。
「ごめん、ちょっと遅くなった」
「そんなに待ってないよ」
うそ。本当は一分を一時間ぐらいに感じてた。でも、こうして会ったら、心配なんかしていたのが、スーッと消えていく。
「あの……それで用事って?」
「ああ……。あの……」
やっときた。何年間も待ち望んでいたこの瞬間。私の心臓がどくどくと、うるさく音を立てる。
「俺、お前が好きだ」
本当に?凄くうれしい!
「私も――」
答えかけた瞬間、
「でも、その望みは叶わないかもな」
「えっ、何で?」
私も好きだし、願いはかなったんじゃ――
「ヴァンパイアの掟。人間と恋したら、いけないんだよな……」
どうでしたか?次も頑張って更新します!