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HERO  作者: サトス
6/8

第6ラウンド

文化祭前日の夜、これがほんとに最後の練習だ。

思えば最初はぎこちなかったクラス全体が、不思議と今はまとまっている。

練習をサボる奴は1人もいなくなり、公園は39人の熱気と笑い声でいっぱいだ。

これがドラマやテレビでよく耳にする「青春」なのかどうかは知らないけど

それにかなり近いことであるのは、なんとなくわからないでもない。

そう、金や地位も名誉もいらないと思える瞬間だ。なんってったって若さがあるからね。


8時から、10時に休憩が入るまで僕らは踊り続けた。

ダンスミュージックのボリュームはMAXなので近所の人には良い迷惑かもしれない。

みんな汗ダラダラで、横田なんて着ているTシャツをしぼれば汗が2ℓは出そうだ。


僕はそのまま人工芝に倒れこみ、買ってきたポカリでノドを潤す。

口の中の粘つきは一息で落とされ、胃に冷たさが流れ落ちていくのを感じる。


「ごめん、そうちゃん。ちょっとそれもらっても良い??」


この声はもしかして・・・・  「だめ〜?」 やっぱり、相沢だった。


うかつだった。頭がのぼせていて相沢が横で倒れこんでいるのを気付かず

僕はやたらと長いゲップをしていた。とびきり汚いのを2発。


「え?全然良いよもう全部飲んじゃって!俺ポカリ嫌いやし!」

とっさに意味のわからない言い訳をしてしまう。


相沢は上品にポカリを飲んでいる。ノドが2〜3回動いた。


「あ〜生き返ったぁ!!ほんまありがとぉ、でもそうちゃんゲップは汚いでぇ(笑」


ガビ〜ン!!マンガの中だけだと思ってた効果音が、今僕の心に流れている。

 

「は・・・はは・・・は・・・」ぼくの笑顔はきっとひきつっていたはずだ。


そこにいきなりケンの助け舟が入る。「あ〜相沢とそうたったら!間接キッス〜!」


「見ちゃったわ親しげに1つのジュースを交換してる2人を!どーゆー関係じゃ〜」


「小学生かおまえは!そ、そんくらいは今時の高校生は普通にしてて・・」


「そうたったらムキになっちゃって〜」


「なってへんわ。相沢からもガキだって言ったってくれよ、な?・・・・あれ?」

振り向いた僕の右に相沢の姿はなかった。え?瞬間移動?

「相沢やったらあっち」 ケンが指差したほうにはシノブ達と話す相沢が見えた。

「ほんま1人であたふたしちゃって!今の爆笑もんやで?」

ケンは笑いすぎでおなかを押さえている。

「あ〜焦ったぁ!てか焦って損した。女って変わり身はやいな〜。」


ケンの笑いがいきなりとまって、僕の目をみながらクールに言う。

「なぁ」    「なに?いきなり真剣モードで」

 

「チャック!」   「はぁ?」わけが分からない。


「開いてるで!チャック!!笑笑」


下を向いた僕の視線の先にはきれいに楕円のトンネルを作ったデニムが見えた。

 

「ちなみに相沢が向こう行ったのそれに気付いてから。必死に笑いこらえてたわ。」


ふたたび「ガビーン」が心に響いた。ボリュームはさっきの非じゃない。


ケンは「息できねえ」と本当に苦しそうに笑っている。

僕が固まっているとシノブの「休憩終了!練習開始〜。」の声が聞こえた。

それから1時間僕は泣いてるのか笑ってるのかわからない顔で

誰よりも激しくダンスを踊った。










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