第5ラウンド
その後、家に帰って僕は死ぬほど後悔することになる。
メルアドを聞きそびれたことと、家まで送って行かなかったことの2つについてだ。
まぁでも、今日は僕にしてみたら上出来だ。よしとしよう!
ベッドに入ってから思い出し笑いをかみ殺し、僕はにやけた顔のまま眠りに落ちていった。
次の日の朝のHR前に、昨日の相沢とのやりとりをケンに話した。
ケンは僕の相沢への気持ちをすでにお見通しだ。男前で優しく、勘も鋭い。
2回目だけど、ほんと神様って不公平だよな。
ケンのテンションはいっきに高くなった。
「え〜マジで〜ちょっといい感じやん!家まで送れよバカ。」
「うっさいなぁそれは昨日充分反省したわ。」トイレで2人盛り上がる。
HR5分前のチャイムが鳴りトイレを出る時、ちょうど前を通り過ぎる相沢と目が合った。
不意打ちだ。髪の毛をもうちょっとちゃんとセットしとくべきだった。
「おはよん。そうちゃん」 「お、おはよ・・・ん」
そうちゃん!今確かにそうちゃんと聞こえた。朝だから耳が寝ぼけたのかもしれない。
そんなわけは・・ない。「よっしゃあああああああ」
相沢が教室に入ってから雄たけびを上げた。ケンはちょっとひいてる(笑)
男前にはわかんないだろ、この気持ち。
今日1日僕の顔がにやけてるのは、言わなくてもわかってくれるだろ?
文化祭は確実に近づいていた。どのクラスも休み時間まで
使って最後の追い込みをかけている。僕ははっきりいってダンスが苦手だ。
ラジオ体操でさえ人よりワンテンポ遅れる。
今日もいつもの公園で、僕一人だけみんなよりあきらかにリズムがずれていた。
「ちょっとそうた!しっかりしてよ。文化祭近いんだからぁ、後一週間やで?
あさってまでには覚えてよ?じゃないとカンチョーするから!」
シノブが中指を立てて言う。おいおいそれじゃFU○Kだろ!
僕はシノブに殺されたくはないので人一倍練習にはげんでいた。
でも休憩時間のたんびに相沢のほうを見てしまう。カンフル剤みたいなもんだ。
可愛い。。。。。もし相沢が娘だったら僕は「門限は6時だ!!」
とか言っちゃうだろう。例えが少しおかしいけど、その位の勢いだ。
2日後僕はなんとかダンスをものにでき、まだちょっとぎこちないけど最初に比べ
確実にレベルアップした。これでシノブにFU○Kされないですみそうだ。
合格印をシノブにもらい一息ついていると「なぁ!」マサキが半笑いで近付いてきた。
やばい、性犯罪者の顔だ。けど僕は知ってる、マサキがこんな顔で近付いてくる時は
だいたい彼が恋に落ちた時だってことを。
彼は半笑いのまま口を開く「てか、シノブってけっこう良くない?」
おいおい笑いすぎで頭までやられちゃったのか親友よ。「マジで言ってる?」
「言ってる。最近メール良くするねんけど、なんかけなげっつーか可愛いとこあるんだよ。」
「へ〜、ふ〜ん。」いきなりすぎたのでコメントが思いつかない。
「なんやねんそのリアクション。やっぱりシノブはないかなぁ〜?」
「いや良いんちゃう?世話好きやし、おもろいし、まぁちょっとブチャイクやけど(笑」
「女は顔じゃね〜んだよ」
恋は意外なとこにたくさん転がってる。いつ拾うかは誰にも予想できないけど
きっとこれを読んでるあんたのそばにもそこらじゅう溢れてる。
ちょっと見渡してみて、拾ってみるのも良いんじゃないか?誰もが少しにやけるのは
今僕の目の前の犯罪者顔の彼が、証明してくれたとこだ。
「てかおまえは今どんな調子なんだよ。」
「なにが?相沢と?」 「それそれ」
「ん〜なんか進展ないなぁ。そういえば」ここ2〜3日はあいさつくらいしか交わしてない。
「メールは?」 「まだアドレスすら聞いてねえよ」
「じゃぁええこと教えたるわ。相沢は気になってる人にしかアドレス教えないんだとよ。
シノブ情報やから間違いないで!」
「え!!そうなん?それぜんっぜん良くねえよ。今のでアド聞く勇気かんぺき消えた。」
「わりぃわりぃ。でもこれでちょっとは気持ちわかりやすくなったやろ?」
マサキは僕の背中を強く叩いて笑った。
マサキが叩くリズムに合わせて僕の心は少しずつ沈んでいく。
このやろ〜他人事だと思いやがって!その聞かないほうが良いアドバイスのおかげで
その後ダンス練習はあまり身に入らなくて、シノブの中指に何度も脅された(笑
はぁ。こんなんじゃメール一生できないかもな・・・
つづく