第4ラウンド
簡単に訳すとこんな感じだ。
横田の帰り道には歩道の横に木がたくさん植えられていて鳥がうじゃうじゃ騒がしく
さえずっている。2ヶ月前横田が(片手にパン、片手にコーラを持ちながら)
帰っていると20m先にうずくまっている宮野を見つけた。
横田がそこから動けないでいると宮野は静かに立ち上がり、木をのぼりはじめた。
片手にそっとヒヨ鳥のひなを包みながら。
10分かけて宮野は巣のある枝のそばまで登りそっとひなを巣に戻してやったそうだ。
その後口からパンがはみだしている横田のほうを向いて恥ずかしそうに微笑んでみせた。
その瞬間、横田のハートは打ち抜かれたらしい。春のちょっと心温まるストーリー
恋に落ちる時なんて誰だってそんなもんだ。
でも僕は宮野の「恥ずかしそうな笑顔」をちょっと見てみたかった。
「ね、いい子だろ?」横田は天使を思う顔でにごった夜空を見上げている。
ここで僕の素朴な質問を1つ
真面目そうな奴が少し悪いことをすると評判はガタガタに落ちる。
でも悪そうな人が少し良いことをするのを聞くと評判はやたらとあがる。
不思議だ。自転車の2人乗りを注意するおまわり並みに不思議だ。
まあ、僕みたいに中途半端なやつには関係のない話。
ケンが言う。「思ってたより悪いやつやなさそうやなぁ。」
「うん。見直したわ。人は見かけによらんもんやね。」と相沢
「うん、うん」これは相沢に合わせた僕(笑
「今度帰り道見つけたら、この前ひな助けてたことで話しかけてみぃや。
そして誉めろ。女なんて誉めときゃええねん。」マサキが笑いながら言う。
「で、できるかなあ・・・僕なんかに」横田はクネクネしだした。
するとなんとあの沢野が「横田!男やろ。ちんこついてるんやったらバシっといけやぁぁ!」
え?沢野そんなキャラだったっけ?綺麗な顔の女の子から突然そんな言葉がでて
男4人は軽いショック状態になり、固まってしまった。
シノブは手を叩いて笑っている。相沢は「こら、乙女でしょ」と一応ツッコミを入れていた。
バカらしくて楽しい初夏の、夜の1コマだ。
僕にとって本当に楽しかったのは11時半に公園を解散したあとだった。
横田とケン、沢野は帰る方向が駅方面でシノブとマサキは学校方面。
ぼくと相沢はその逆の、住宅地方面で当然2人きりで帰ることになる。
みんながみんなに手を振り合い「また明日」と言い合っている間、
また僕の心拍数はあがりっぱなしだ。歩き出して28歩目、先に口を開いたのは相沢
「あ〜!もうこんな時間かぁ、親に怒られちゃうわぁ。でも、今日は楽しかったね。」
天使のような微笑を見せる彼女。
「や、やなぁ、横田の奴叶わない恋なんかしちゃって。あはは・・はは・・」
なるべく自然に笑おうとすると、とてもマヌケな感じになってしまった。
全身の毛穴から汗がでている気がする。
その後お互いの家がどこにあるのかを教えあい、意外に近いのを聞いて僕は嬉しかった。
「あぁ、あそこなん?お家!良いねぇコンビ二近くって。」
僕の家からコンビニまでは、本気で走れば10秒だ。
「そっか?夜とかけっこううるさいねんで?ヤンキーの方々お集まりになるし」
「え〜イヤやなぁ〜からまれたりしたら・・・・」
その時はもちろん10秒で助けに行くつもりだ。なんて思いながら
「相沢はかわいいから危ないかもな。」サラッと、できる限りサラッと言ってみせた。
「え?そんなお世辞いらんわ〜。でも、ありがと」相沢のほっぺが薄いピンク色に
染まったのは目の良くないぼくでも良くわかった。
「あ、あたしここ左やから、今日はどーも、また明日!じゃあおやすみぃ〜」
「おう、おやすみ」僕は2分は手を振り続けた。天使が見えなくなるまで