098
やっと光太郎から顔を離して
「ごめんなさい…」と言った。
「いいよ。辛い時は誰かが支えてやらないと……
あ…これ俺が経験したことだから~」
「クシュン…」
玄関ですっかり体が冷えてしまって私は体を震わせた。
「大丈夫か?」
「はい……ちょっと寒いかな……。」
「おいで」
昨日パーティをしたリビングは暖かかった。
「社長は…出張でしたね…奥さまは?」
「お先にハワイへ行きました~」
「ハワイ?」
「うちは正月をハワイで過ごすんだ。
かあさんとねえさんたちは先に行って旦那連中を待つんだ。」
「すごいですね~
じゃあ明日から光太郎さんが戻ったら
ここ留守ですか?不用心ですね~」
私は暖炉の前に座った。
「なんのためのセキュリティーだ?」
光太郎はシールを指差して笑った。
暖かい空気に包まれて私はホッとした。
「あいつ・・・春湖の彼氏か?」
光太郎がちょっと前から私を呼び捨てにして
少しだけ胸がドキンとした。
「えへへ…そうなの…昨日も今日もあの子と一緒だったなんて…
すごくビックリしたわ……
でも…秋杜の話を聞かないと……じゃないと…
私は秋杜を信じてるから……」
そう言うとまた涙が溢れてきた。
「信じてるなら泣くなよ。」光太郎がティッシュで涙を拭いてくれた。
「そうだけど……
めっちゃショックだったから…光太郎さんが悪いんだよ…
あんなとこに連れていくから……。」
「俺?そう?俺か~~」
光太郎が高笑いをしたから私もつられて笑った。
「春湖は笑顔がいいよ。」
そう言うと光太郎は私の頬を自分の手のひらで包み込んだ。
私は思わず心地よさに目を閉じた。
「いいこときっとあるさ
春湖が教えてくれたんだからな。」
「そうでしたね……
いえ…私より光太郎さんの方が大変そうだわ…」
「どさくさにまぎれてさっき玄関で春湖を抱きしめながら
俺も泣かせてもらったってとこかな。」
「私もお役に立てたんですね…よかった……。」
「サンキューな~これで俺もまた気持ち新しくして
頑張れる気がしてきたよ。」
「そう考えれば私だって 光太郎さんじゃなくて
ルイトだって思えば…こんな夢みたいなこと…
それだけでもテンション高いことだわ……。」
「あはは~そういう考えもありか……。」
そう言いながら光太郎は私の髪の毛を弄んだ。
ヤバイ…ヤバイ……
雲行きが怪しくなってきた……。
目の前にいるのは 芸能人のルイトで社長の息子の光太郎で……
そして秋杜じゃない男だった。
大人の男に包まれてる安心感がなおさら私を安心させた。
このまま光太郎に抱きしめられていたらきっと
辛いことを忘れられて…秋杜の裏切りも許せるかもしれない……
抱かれたかった……
ずっとずっと秋杜に抱いてもらいたかったけど……
秋杜は私を抱かずに 萌と・・・・・
そう考えて 私は首を振った。
「どうした?」
「今頃…カレどうしてるかなって……何してんのかなって…
そう思ったら悲しくなった。」
「きっと…俺たちと同じことしてんだよ…」
「・・・・・」私は一気にまた不安になった
「ごめん~~冗談だってば……」光太郎が私の顔を覗き込んだ。
目が合った……。
そして次の瞬間 自然に唇が合わさっていた。