096
「少しドライブくらいできるよね?」
「少しなら……」
「よかった~」光太郎はエンジンをかけた。
私は勇気を出して聞いてみた。
「今日…死なないですよね?」
光太郎は驚いた顔で私を見た。
「なんで?」
「あ…いえ…きのう宣言してたから?」
「俺?マジ?」
「おかげさまで昨日の夜は寝つけませんでした。」
光太郎はサングラスをとった。
ルイトだ………。
「ごめん~俺そんなこと言ったんだ。昨日はめっちゃ酔ってて
朝 かあさんに怒られたしな……。
大丈夫だよ……ごめんな……。」
「よかった。ホッとしました。
辛いことあっても死んじゃだめですよ。
きっとまたいいことあるし…その日のために頑張らなきゃ……」
私が言い終わると 光太郎は笑った。
「春湖ちゃんに会いにきてよかったよ。」
ドキン
「そうですか。それはよかったです。」なるべく平然と答える。
秋杜にメールをした。
『帰ってきたら メールしてください。』
しばらく車を走らせて 無言になった時
私のお腹が鳴った。
「あ…」恥ずかしくて真っ赤になったら
「飯食べれる?俺の知ってる店めっちゃうまいよ。」
秋杜のこと考えたくなかったし
正直 私もまだ…光太郎といたかったから……
「はい。」と答えた。
車を走らせていくと 家の近くを走りだした。
「ここうちの近くです。」
「マジに?」
「はい こんなとこにそんなお店あったの知らなかった。
俺さ・・・大好きなんだその店 こっち帰ってきたら必ず行くよ。」
ほんと知らなかった~
私の小学校と中学校を超えて 少し家からは
逆方向だったけど 住宅街にその店はあった。
「うえ~めっちゃ混んでるな~」
小さい駐車場が一杯で大混雑している。
「こんなとこにある店なのにすごいですね…」
「ちょうど…そっかクリスマスだからだな。」
光太郎は携帯を取り出して 店に電話をかけた。
「・・・了解~~じゃあよろしく~~」
携帯をポケットに入れて
「個室あけてくれるって~~ラッキ~~
車が止められないから…オーナーが近所の家の人に頼んでくれるって……」
「よかったですね。」
店からおしゃれなエプロンをつけた女の人がきて
「ご無沙汰してます。」と言った。
「今日混んでるね。やっぱカップルばっかり?」
光太郎が言った。
「おかげさまで~幸せそうなお客様ばっかりです~
光太郎さんは…」と私を見て一瞬戸惑った表情をしたけど
「あ…駐車場 オッケーしてくれましたから
一番奥の大きな家あるますよね。あそこの一番左端に停めていいようです。」
「あ~あのでかい家ね~~」
いえいえ…あなたの家の方がでかいですから……
そうだよね…今日はクリスマスだよ。
どうして私は違う人と一緒に過ごしてるんだろう……。
秋杜から…まだ返信はなかった。