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「おねーた~~ん」
私が玄関に入ると 課長の一番上の男の子が飛び出してきた。
「こんばんわ~」
玄関だけでもうちのリビングの大きさ
天井までの吹き抜け・・・・・。
目に見えるものが全部 キラキラしてる……。
「いらっしゃ~~い」一世さんが出迎えてくれた。
花柄の上品なエプロンをつけて めっちゃキレイだった。
「どうぞ~~」
「おじゃま…します……。」
緊張で鼓動が速くなってきた。
さっきまで頭で考えてた挨拶の言葉も真っ白になってる…。
リビングを開けるとそこは……
た…体育館……?
そんな広い空間が広がって グランドピアノが
でで~~んと中央においてあって
暖炉があって……
右はじには 子供たちように遊具がおかれている。
すごい…やっぱ…違う……
私の目が白黒してる隙に社長が奥さまともう一人女性を連れて近づいてきた。
「あ!!」もう私は緊張で足が震えてる。
「このたびは…お招き…いただきまして…
あ…ありがとうございます……。
これは…つまらないものですが……お孫さんの分ありますので
是非…お食べ下さい……。」
少し噛みながら なんとか挨拶はできた。
「いらっしゃい。私の妻と娘の幸子だよ。
それから幸子と双子の美子がいるけど今 子供を寝かせてるので後で紹介するよ。」
「あ・・私は…受付嬢をしています
平野 春湖と申します。」
「本当 可愛らしいおじょうさまね~。
主人から聞いてたのよ。お客様からの評判がいい平野さんのお話。」
「あ…そんな…今回のお客様が
ご丁寧に社長にお手紙を送ってくださっただけで……」
ド緊張しまくり・・・・・
「そんな緊張しないで~~普通の家だから~~」
幸子さんがカミカミの私を 気の毒そうにそう言ってくれた。
普通じゃないだろ~~
「子供たちがいて うるさいだろうけど…
楽しんで行ってね。」
「はい。」
そのうち二階からたくさんの子供たちが降りてきた。
子供たちは右はじの遊具で遊んだり 床に寝ころんで
絵をかいたりして 楽しそうだった。
社長はマッサージイスに座って新聞を読んで 女の人たちは忙しそうにしていた。
「何かお手伝いすること……」
「あ…それじゃあ…光太郎起こしてもらう?
こんな可愛い子が起こしてくれたら アイツもさすがに起きるでしょ?」
幸子さんが言った。
「そうね~寝起きの悪いヤツだから春湖ちゃんが
起こしたら飛び起きるんじゃない?ビックリして~」
双子の美子さんがクスクス笑った。
「でも…春湖ちゃんもきっとビックリすると思うわ。
光太郎見たら……」一世さん
え?何がビックリなの…?
「どうせ紹介するんだし…フフフあいつがどんな顔するか
めっちゃ楽しみだわ。ほんとぐうたらなんだから~~」
幸子さん
「仕事が忙しいのよ。仕方がないわよ。
帰って来た時くらい寝かせてあげてよ…」奥さまが言うと
「甘いんだわ~~」幸子さんと美子さんが声を揃えた。
「さすが双子ね~~息もぴったりだわ~~」一世さんが吹き出した。
うちにはきょうだいがいないから
とても楽しそうだった。
きょとんとして立ってると一世さんが
「じゃあ…一緒にもう一人起こしに行きましょ。
ここの長男坊で一番末っ子の甘ったれなのよ~~」
「あ…はい……。」
階段を登るのかと思うと
「こっちよ~~」と一世さんが手招きをした。
「エ・・・エレベーターだ~~~」
私が驚いていると
「三階まできついから~ウフフ~」と笑った。
エレベーターに乗って三階につくとドアが一つだけあった。
「何が驚くんですか?」
「あ…それは驚いてから教えてあげる。」
一世さんが楽しそうに笑った。
「でも…あ…もしかして先輩が言ってた
芸能人だって…誰かは知らないけど……」
「え!?噂になってる?」一世さんが目を丸くした
「っていう噂だよって……教えてくれました。」
さすがに不安になってきた。
「噂ね~~」一世さんが笑った。
「あ噂ですか~」私の言葉にも一世さんは笑ったままだった。