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一世さんにメールをしたら
『彼氏とのイブは残念だったけど クリスマスは一緒なんだから
ぜひイブはお呼ばれしましょう。叔父も喜ぶと思うのよ。』
ということで 私は秋杜と食べようと思っていたテナントの有名なケーキ屋で
キャンセルしたお詫びに ショートケーキを集まる孫の人数分購入。
「あれれ~彼氏にふられたのか~」
パティシエの松澤さんが笑った。
「今日の予定が変わっただけだもん~意地悪ね~」
私も笑った。
本当は……めっちゃショック…
でも幸いに 予定が入ってくれててよかった。
家で秋杜の帰りを待ってたら…落ちこんでしまうところだった。
やっぱり秋杜とは…年の差を感じてしまう。
秋杜が就職して社会に出たら 私たちの距離はうんと縮まるけど
それまでにはかなりの月日が必要だなって思った。
みんなに堂々と発表できない彼女なんだよな私
ちょっと切なかった。
私のこと大事に思ってくれるのはわかっているけど……
閉店まで勤務の課長を置いて
街にあふれるカップルを尻目に 私は一世さんに言われたように
地下鉄を乗り継いで バスに乗り換えた。
社長の家ってやっぱここなんだな~
お金持ちが集まるここらへん
街から遠いのに ただきっと夜景がきれいで
上から目線で街の夜景を楽しめるこの土地は
有名人や金持ちや社長や政治家や…
そんな人たちが町内会にたくさんいるところだった。
街に行くのもバスなんかじゃなくて
みんな自家用車で行くから 不便さを感じないのかな。
眼下に広がる街の灯りが 宝石のように輝いていた。
今夜は街中が冷えた空気につつまれてて
その凛とした空気が さらに夜景を輝かせている。
「きれい~~」
夜景に見とれながら いつか秋杜と一緒にみたいな
そう思った。
社長のお宅はバス停からもさらに坂道を登る。
「金持ちの気持ちがわからんわ……
これじゃ毎日が山登りじゃん……あ…そっかマイカーあるからいいのか…」
ブツブツつぶやきながら
ロードヒーティングで見えるアスファルトを登り続ける。
素晴らしい家々を見ながらため息が漏れる。
ヒーヒー
私の息はとうとう切れ始める。
最近鍛えてないからな~~
体力も衰えてる………。年を感じる……。
「あ~~あそこだ・・・・。」
美しい電飾が光っていた。
「うわ~~もう…別世界だ……。」
社長の名字を確かめる。
「檜山」
「ふえ~~~っ~~」目の前に広がった大きな洋風の豪邸に
これからきっと何度も驚かされるんだろうと私は深呼吸をした。