007
私は高校生 秋杜は小学校6年生
朝家を出る時 秋杜と一緒になる。
「秋杜~また背伸びたんじゃないの?」 私は秋杜の横にならんでそう言う。
「春湖がちっこいんだよ 小学よりちっこいってどうなんだ~」
最近 口数は少ないけど 生意気さは増している。
「秋杜なんて背が伸びたって ただのオタクなんだから伸びるだけ無駄なのにね~」
生意気な奴には 私だって言わせてもらう。
「チビブスが~~」そう言って私を押して歩き出す。
「チビだけどブスじゃないし~~ぃ!!」本当にムカつく。
確かに背は大きくなっているけど やっぱり小学生だ……。
大きな体に背負うリュックサックが幼さを醸し出す。
まだまだ私の中では 秋杜はガキ お子ちゃまの何者でもない……。
だけど最近少し かすれてきた声や 私を見下ろしてくる視線にドキンとする。
私が五歳年下で秋杜と同じ学年だったら…もしかして~なんてことがあるかもしれない。
悔しいけど絶対いい男になる予備軍だし
背もたかいし…そしてあの腹が立つほど俺様な性格は
遠くから見ていたら もしかして…もしかしたら…好きになるかもしれない。
遠くからだよ…遠くから……。
あんなの全て知り尽くしてたら…絶対無理 無理~~だ~~
毎年バレンタインデーのお返しが大変だと 由美ちゃんがこぼしてる。
学校でもらうと絶対にもってこないから
直接 由美ちゃんに手渡しする作戦が増えているらしい。
去年は担任が 秋杜が持って帰らなくて教室に放置していた
チョコレートを届けにきてくれたとか……
「あんたって鬼だね~女の子の心踏みにじってサイテーだわ。」
私はまるで自分がされたような気がして 本当に腹が立つ。
「春湖~」と手を出す秋杜。
「何よ」毎年毎年バレンタインデーは
「チョコよこせ。」
「は?だってあんた一杯もらうんでしょ?それも心を踏みにじるくせに……
そんな奴になんでチョコやらないといけないの?
どうせ放置されたり捨てられるか 尚ちゃんに食わすことになるんだから~」
私は意地でもそれが義理チョコでも絶対にあげなかった。
「ケチブス!!」秋杜はこの世で一番憎らしい顔でそう私を呼ぶ。
「うっせー!!チョコは好きな人にしかあげないんだよ。
体は大きいけど…まだ子供だからってね あんたにだけは気を使いたくないわ。」
そんなやり取りを見ていて
尚ちゃんが
「ひどいこと言うな。うちの大事な王子に~~
春湖のチョコだけ欲しいのにな…?可哀そうな秋杜・・・・・。」
みんなが爆笑する。
「子が子なら親も親~~尚ちゃん そんなにチョコ食べてたら
おすそわけもらってるパパと一緒に糖尿になるからね!!」
私が言い返すと
「おい~パパ~~おまえの娘は
どうしてあんなに気がつよいんだろーね。誰に似たんでしょうか?」
尚ちゃんがパパの背中をたたいた。
「それはさ~まだ春湖が恋をしてないからだよ~」
パパがそう言って笑った。
「そうね~恋をしたら少しは優しくなれるかもよ~」ママまで~~
「何よ!!私が悪いって言うの!?
全ての根源はこの可愛くない わがまま暴君のクソ王子のせいだからんね~」
横でニヤニヤ笑っていた秋杜の頭をぶん殴った。
いいよ…知らなくて……
誰にもわからなくていいの~~~。
だって…今 私は恋をしてるの……。
燃えるような片想い……絶対にこの恋実らせてみせるわ~~。
17歳の私・・・・
切ない片想い中・・・・・・・。