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秋杜が帰るまで 何も手につかなかった。
萌のことを秋杜が好きだとは思えないけど・・・・
どうして秋杜が拒否しないのかが不思議だった。
嫉妬心がメラメラ~~と湧いて
頭の中それで一杯だった。
お風呂あがりの
ふとうつった鏡の中の自分に立ち止まる。
こういう風になりたくなかったんじゃなかった?
秋杜に嫉妬したり追い詰めたり……
秋杜のまわりにいる女を敵だと思うことで
醜くなる自分が…怖かったんだよね
そう今 鏡の中にいる私は それに近い顔をしてる……。
秋杜を好きになるってことは
秋杜の世界を信じることなんだよね。
課長と一世さんだって…きっとそうやってお互いを信頼してるから
幸せな関係を築けている……。
もっと…大人にならなきゃ
鏡の私の頬に気合い入れを ビシビシとした。
カチャ…
鍵の音がして 秋杜が帰ってきた。
「おかえり」私はニッコリ笑顔で秋杜の前に出て行った。
ニッコリ笑えてるよね?
「ただいま。」秋杜はホッとしたような顔をした。
「寒かったでしょ?夕飯 久々母の手料理を味わいましょう
待ってたんだよ~~」
「あ…そういえば…雪が降ってきたよ……。」
「いつ?」
「たった今・・・・」
秋杜の言葉に急に興奮した。
「外行こう~~外~~~」私は慌ててスリッパをはくと
「風邪ひくぞ~めっちゃ寒いんだから~」
秋杜はまだ滴が落ちてる私の髪の毛を見て止めたけど
私にとっては 今年の雪は特別だった。
玄関のドアをあけると大粒のぼたん雪が舞っていた。
「キャ~~」
「なんだよ…いつもの雪だろ…これからうっとーしー季節だぞ。
何がうれしいんだよ…毎年ウンザリなのに…」
「何言ってんのよ…今年からの季節は私にとっては特別なんだよ。」
「え?なんで?」
「だって…秋杜と一緒に見る雪じゃん…それも初雪……
それもこんなきれいな ぼたん雪だもん~~感動するわ~~」
後から秋杜が私を抱きしめる。
「二人で一緒に見る…今年最初の雪か……」
胸の前で組まれた秋杜の手を握りしめる。
真っ白な雪が…私の心の汚れを消してくれるような気がした。