074
仕事中もにやけがとまらない……。
「春ちゃん 何かいいことあったの?」
受付嬢の先輩が 聞きたがるほど 自然に顔がゆるんでいる私
早く帰りたいな~~
帰ることばっかり考えていた。
昨日の続き~~甘いキス
それから私にだって…ちゃんと甘い言葉言って貰わないと~~
自分ばっかり 私の告白聞いたんだし……
私だって…聞きたい 安心したい……
誕生日にあげそびれた プレゼントも……
秋杜に渡さなくちゃ……
だけど……
萌のことも気にかかる……。
あの秋杜が なんで萌のことは受け入れたのか…それは聞きたかった。
あの子…生意気だわ……
どこか 女秋杜みたいな…感じ……
由美ちゃんからメールがきて 夕飯の支度済ませて帰るよって
今日はご飯の心配もしなくていいし 最高だ~~
猛ダッシュで ヒールの音も軽快な私
早く会いたい…
その一心で 家路を急いでいた。
玄関を開けて秋杜の靴を確認した。
ドキン……
そして……また あの小さな靴……
萌だ・・・・萌が来てる・・・・
泣き声?
恐る恐るリビングのすりガラスに近づいた。
「泣くなって……」秋杜の声
私は息を飲んだ。
「だって…だって……ヒック…ヒック…交通…ヒック事故だなんて……」
あの憎き萌が 秋杜に抱きついて泣いているシルエットが見える。
「秋杜に…何かあったらヒック…ヒック…」
「もう大丈夫だから…ごめん心配かけて……」
なんで?萌を受け入れてんの?
「秋杜がいないと…萌…死んじゃうからヒック……」
秋杜がなぜ 萌を受け入れているのか…私にはわからない……
「なこと言わないでさ…送ってくよ……」
「ヤダ…泊まってく……。」
「あのな…ほら…行くぞ…」
私は慌てて階段に隠れた。
秋杜のセーターの裾につかまりながら 萌が出てきた。
玄関で秋杜が一瞬立ち止まった。
「おねえさん 帰ってきてるのね。」
萌の声が なんだか楽しそうだった。
しくじった~~パンプス……
「おねえさん 気を使ってくれたのね……」
まるで私がここに隠れているのを知っているかのような
嫌味くさい高い声
あ~~めっちゃ可愛くない……
「行くぞ……」
秋杜と萌が 出て行って 私は力が抜けた。
なんなのよ……萌~~~~は…どういうポジションなのよ……
秋杜が帰ってくるのを 首を長~くして待っていた。