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「ばか…早く目覚ましてよ……秋杜…起きてよ……」
私は秋杜の腕に顔を埋めた。
「ごめんね…私が逃げ出したから…
追いかけたんだよね。私…秋杜のために
私は何一してあげてないのに。」
頬の擦り傷を見つけた。
「痛かったでしょう?」
思わず秋杜の頬にできた傷あとに指が触れた。
ばんそうこう貼ってもらったんだね。
「秋杜がいなくなったらどうしよって…
言いたいことたくさんあったから……謝りたいことも…
たくさんあって…よかった…ほんとによかった……。」
涙がポロポロ落ちてくる
秋杜の寝息に耳を近づけた。
「生意気で憎らしくて…わがままで偉そうで……
だけど…だけど…好きだよ……。
ずっとわかってたんだ……私が秋杜に意地悪しちゃうのは…
きっとこの気持ちを……知られてしまうのが怖かったからだったって……」
「大好きだよ…秋杜がいない人生なんて…
今までもこれからも…考えられないの……。」
絆創膏の貼られた頬に 静かにキスをした。
「でもね…きっと私…秋杜が起きたら…言えないんだ。
本当の気持ち……。
ダメだよね…素直じゃないから……。」
私は秋杜の頬に頬ずりをした。
「熱いね……。よかった生きてるんだよね。
生きてるから熱いんだね……。
よかった…本当に……よかったよ……」
そしておそるおそる この間禁断の掟をやぶってしまった唇に
指で触れた・・・・・。
ど…ドドドド…………
心臓が静けさの中で走り始めた。
「起きてたら 絶対に訴えられるよね……私のしようとしてること……」
静かにその愛おしい唇に顔を近づけた。
「寝てる秋杜にしか…できないよ…こんなこと……
だって……誰も見てないから……」
唇が触れ合う瞬間だった。
秋杜の目が大きく開かれた。
「キャ………」思わず声をあげて体を離そうとした瞬間だった。
秋杜は私の背中に手をまわして
自分の方へと強い力で押し戻した。
「あ………」
私と秋杜の唇は重なった。
そして唇の温度は二人を一つにしたかのように…優しく交い出した。
キス…してるんだよね…私たち……
夢の中にいるようだった。
秋杜とのキスは……時を超えてやっと結ばれた伝説のカップルのように……
熱くて甘くて……とろけそうなキスの味……。
好きよ…秋杜……
私は何度も何度も心の中でそうつぶやいていた。