068
ひくにひけなくなった口げんか
「由美ちゃんたちが来たら 話そうと思ってるんだけど
秋杜はしっかり朝も起きれるし 私がいたとこで別になんもならないし……
一緒にご飯食べるわけでもないし 寂しいわけでもないし…
だったら私も自由に生きたいから引越ししたいって。」
秋杜は冷たい目で私を見ている。
「彼女もできそうだし…私がうろうろ秋杜の家にいたら
迷惑でしょ?もっと自由にいろんなことしたいだろうし~~」
「何をしたいって・・・?」
「彼女と……誰でもすることよ……。
私だってもっと自由に部屋に彼氏も呼びたいし
ここにはやっぱり連れて来れないもん……。」
「おまえの頭んなか やることばっかか?」
「はぁ?何それ……」
「別に好きにすればいいし…俺は一人でも暮らせる。」
自分で墓穴を掘って 悔しくなってきた。
「そ~~ですか~~好きにするわ!!」
もうそろそろ退散しないと 泣きそうだった。
「勝手にしろや!!」
私は頭に来て 外に飛び出した。
「も~~ぉ!! 腹立つ ムカつく バカ!アホ!!マヌケ!!」
バタバタと歩いていたら ハッと気づいた。
「寒い~~~~っ!!」
そうだった 只今季節は 秋から冬に移行中だった
スウェット姿で飛び出してきた私は思わず ブルブルと震えた。
「しくじった~~ぁ~~」
それに一文無しだし……
今さらすぐに帰れないし……
初冬の風が私を刺す・・・・
公園のベンチに腰かけて空を見上げたらめっちゃキレイだった。
そのまま寝転んだら 星空が全部自分のものに感じた。
「めっちゃ…キレイ~~~」
思わずそう叫んだ。
頭が冷えてきて 体温が冷えると同時に
素直になれない自分が情けなくなった。
「今日はちゃんと言うつもりだったのに また違う事いっちゃったよ。
私はダメだな~秋杜の前では素直になれない……
このままなら秋杜は遠くに行っちゃうかもしれないのに……
バカみたい私……こうなったら嫌われた方がいいのかもしれないな~。」
涙が溢れて来た………
このままここで寝られたら凍死するかな
そしたら秋杜 泣いてくれるかな
「大好きだよ……秋杜……」
降ってきそうな星空を見上げていたら 素直になれそうだった。
「好きで…好きで…たまらない……よ……」
目を閉じたら ツーッっと涙が伝ってきた。
「素直になりたい 傷つかない強い心を持ちたい……そしたら
もっと上手に伝えられるのに……」
しばらく星を見上げてると 風が強くなってきた。
「あ…もう…もう…ダメだもん……寒くて…」
歯がガタガタ鳴って ベンチから立ちあがった。
「帰る・・・悔しいけど…寒いから……」
フラフラと歩いていると大きな声がした。
「春湖!!!」
「うわ…っ……」
秋杜が国道の向こう側に立っていた。
やば……っ
さすがに罰が悪かったし 今 秋杜にあうと泣いてしまいそうだった。
「春湖!!!」
私は慌てて背中を向けて公園に向かって走り出したその時
キキキーーーーーーー!!!
ものすごい音で私は 振り返った。
「え・・・・・嘘でしょ・・・・・」
秋杜が車に ひかれていた・・・・・・・。
「あ…ちょっと……」体が動けずにいた。
「誰か~~救急車呼んで~」女の人が悲鳴をあげた。
私はパニックになった。
「秋杜!!!」
私は倒れている秋杜に 足をもつれさせながら近づいて行ったけど……
なかなかそばに行けなかった。
秋杜を引いた主婦らしき人は パニックになっていた。
「どうしよう~~大丈夫ですか!?」
私は 目に見える光景が現実に見えずにさまよっていた。