062
「昨日 遅かったな……」
朝 起きて行くと不機嫌な顔の秋杜と出くわした。
昨日の朝のこともあってまともに顔が見られない……。
「メールしたけど……」うつむき加減に言った。
「昨日のこともあったから…心配してたんだ。」
「もう…いいよ……。
あれはあんたが待たなくていいって言ったのに勝手にやった私が悪かったから…
気にさせてたらごめんね……ちょっと大人げなかったわ……。」
「そう言われると……
だけど俺も…ごめん……」
「いいよ…秋杜は悪くない。
私が秋杜を混乱させてるんだもんね……。自分でもなんかやになっちゃうし……」
その時 秋杜の携帯音が鳴った。
「あ…俺 今日午前授業だから弁当いらない。」
秋杜はそう言うと そのまま 携帯を取りに行ったから私は浴室に向かった。
「あ…うん……めんどい…俺そう言うの迷惑……
おまえな~~……なんなのよ……ばーか…………あはは………仕方ないな……
ジュースおごれよ………あん……女ってマジめんどい……っておまえ女じゃねーか?」
電話の相手は女だとわかった。
秋杜があんなに軽快に女と話すなんて…知らなかった。
どんな子なのかな…きっとあの子でしょ……
素直になる前に 撃沈しそうだなって思った。
用意をすませてでてくると秋杜がパンにかぶりついていた。
由美ちゃんに言われた朝の弱い秋杜はいない
なんのためにここにいるのかの意味……
「今日は早番だから…早いんだろ?
俺も早いからさ……夜俺がメシ当番変わるよ。」
「え?」
「だからさ…たまに一緒にメシ食べるべ。」
秋杜がぶっきらぼうにそう言った。
「そう…ありがとう……」
私はカールした髪の毛をいつものように束ねようと
鏡の前に移動しようとしたら
秋杜が私の手をひっぱって イスに座らせた。
「春湖 まとめんの下手すぎだから……」
秋杜が手際よく私の髪の毛を束ね始めた。
最後のあの日からずいぶん時間がたっていて 今は違うシャンプーを使っていた。
秋杜はそれに気づいてるかな……
どんなこと考えてるのかな……
「できた。」
「ありがとう。」
久々の胸のときめきに息がとまりそうで
私は思わず立ち上がって バックを持った。
「確認しなくていいの?」
「あ…あ…そうだった……」慌ててシャンドレの鏡の前
鏡の中の私 いつもの簡単すぎるおだんごじゃなくて 器用な秋杜の
お洒落なまとめ髪は 私をめっちゃキレイにしてくれた。
「秋杜……」
「あ?」
「私ってまだまだ…いけるよね……。」
「何言ってんだ?」
「新しい恋…していいよね……。」
しばらく間があって 秋杜が
「バカか?おまえ~~じゃ…行くから~~」
そう言うとリビングから出て行った。
私はもう一度 鏡を見つめる・・・・・。
「新しい恋……してもいいかな……それとももう遅いのかな……。」