060
有意義で楽しい時間だった。
私は二人の前では 本当の心を さらけ出すことができた。
二人は私の話を真剣に聞いてくれて
そしてたくさんのアドバイスをくれた。
帰りどうして協力してって課長が言ったのか それは
一時間ほどして子どもたちが起きてきて それはそれは大変な騒ぎだった。
車に乗ると寝てくれるから 最悪寝つかなかったら
私を送りながら 子供たちを寝かせつけるという作戦なんだって課長が笑った。
課長と一世さんは
「ごめんね~」と何度も謝りながら交互に子供たちの口に
ごはんを運んだ。
その間もとってもにぎやかで さっきまでのゆったりとした
大人の時間は吹っ飛んだ。
私は一世さんの後片付けを手伝わせてもらった。
その間も一世さんは背中に赤ちゃんを背負って
下から「おかあたん~~だっこして~~」って泣く長男坊を
あやしながら動き回っている。
「春湖ちゃん ごめんね~」
「いいんですよ。見てると楽しいから~」
「おとうさんのとこいきなさい。」
上の子に 一世さんが言うと
「おかあたんがいいんだもん~~」と泣いた。
「今ね 弟ができてからずっと 赤ちゃん返りしてるんだよ。
俺じゃダメなんだよな~~。」課長が寂しそうに笑った。
「一世さんすごいですね~~
完璧に家事をこなして 子育てして そして愛する旦那様に
愛情たっぷり注いで……私にはできるかしら……」
「愛だよ。愛。さっきも話しただろう。
素直になりなさい…。それが間違いなのかそうじゃないのかは
今の時点ではわからないけど…気持ちに素直になれば
もしかしたら間違えだったとしても それはいい思い出になることもある。
要するに自分の心がけ次第だよ。」
一世さんが片手に上の子を持ち上げて 背中に赤ちゃんを背負って
「そうよ。愛する人のために頑張れるって素敵なことよ。
私は素直になってよかったって思ってる。
もしこれから先 トシちゃんが若い子と浮気をしても…後悔しないわ。
あの時 高い壁をよじ登って 私に結婚してくれって何度もぶつかってきてくれた
トシちゃんは そんなことする男じゃないって
信じてるけどね~」
一世さんがとっても眩しかった。
「私もなれるかな……。」
「まずは…素直になって…関係を修復していくことね。
相談にのるからいつでも連絡してきてね。」
アドレスの交換をした。
「おかあさんって大変なんですね。
うちは一人っ子だったから…兄弟には憧れてたんだけど……
おかあさんはたくましいですね。」
「愛する人との宝物だもん~~
私の人生はもうこの三つの宝物のためにあるのよ。」
そう言って 抱きあげてる上の子にキスをした。
帰り道 車に乗せた瞬間に 二人とも静かになった。
「すごい…ホントにすぐ寝るんだ……」
「変な癖でしょ……ほんとに困った時はこうして車に乗せるのよ。
私も早く ノンアルコールじゃなくて 純のビールを味わいたいわ~~
下の子のおっぱいが終わるまでの我慢 我慢~」
一世さんが笑った。
「その分俺が飲んでやるからな~~」
みんなで爆笑した。
そんな爆笑の中でも子どもたちは起きることなくスヤスヤと眠ってる。
家の前についてお礼を言って車を降りた。
課長が出てきて
「また 遊びにおいで。」と言った。
「はい。喜んで伺います!!」
課長の車が見えなくなるまで 手を振った。
行ってよかった
素直になろう……そしたらきっと何かが見えてくるかもしれない。