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       059

一世さんのごちそうはすごかった。


可愛いエプロンを貸してくれて私は指示通りに

食べ物をテーブルに運んだ。



「ダイニングテーブルでごめんね。

子供が起きると大変なの。」




「はい わかります。」




「あの…課長とはどんな感じでおつきあいしてたんですか?」




「どんなって・・・?」




「あの…一世さん年上って……」




「年のこと?」




「ええ……実は私も今 年下の子に恋をしてて

いけないとおさえ付けてもどんどん彼のことを好きになって

自分がなんか哀れで仕方なくて……」




「そうなの。それで私に会いたかったのね。

まかしといてどんな質問にだって答えるから。」




「すみません……朝もちょっと喧嘩してきて

落ちこんでた時に課長に声をかけていただいたんです。」




「トシちゃん ナイスだね~」



「俺のことほめてくれてたの?いっちゃん~」

タオルを首にまいて髪の毛のボサボサの課長が出てきた。



いつもきちんとオールバックにしてるから


「課長けっこうワイルドなんですね。」と私が言うと



親指を立ててビールを出した。




「座って~~乾杯しましょう~~」お互いのグラスにビールをついで




「乾杯」と言って グラスを鳴らす。



一世さんの料理はめちゃめちゃ美味しかった。

味付けの質問をしたら


一冊のノートを見せてくれた。



「これは 私が彼と付き合いだした頃 かきだしたレシピ本なのよ。

彼が美味しいっていってくれたものだけかきだしてるの。」



キレイな字で色とりどりのペンで可愛い絵も描かれてた。



「一世さんってすごいわ。」



一世さんはニッコリ笑って 

「そういう努力が全部・・・私の安心につながってるのよ。」

と言った。




「安心?」




「彼を目の前にしていうのは恥ずかしいだけど……

春湖ちゃんが悩んでるって言うから力になりたいの。

私は先に老いて行って 彼は男として磨きがかかってくる……

その時 私が彼を繋ぎとめておけるとしたら

家庭の居心地のよさと私の妻としての務めだと思うの。

だから私は彼と一緒にいたいから 努力は惜しまないわ。」



私は思わず大きくうなずいた。



「居心地も妻としてのつとめも 俺にとっては最高級だよ。

だってさ・・俺が好きで好きで おしておして

やっとこうして一緒になれて…俺が一番幸せなんだから。」




「課長が好きだったんですね~

わかる気がします。一世さんホントに素敵だもん。」




「なんか…春湖ちゃんのおかげで…

嬉しい言葉聞けてうれしいわ。」


エプロンの裾で一世さんが目尻をそっとふいた。




「俺がこんなに好きになった人だもん……。

俺の幸せはここにしかないし……これからも変わらない……

でもお互い人間だからうまく伝わらない時もあるよね。

そう言う時は 一緒にお風呂に入って湯船につかるんだ。

なんでかわかんないけど…そうするとお互いの心がよく見えてくるんだ。」




「お風呂ですか!?だって…イヤ~~ン恥ずかしいわ~」

私が顔を覆うと



「ごめん刺激が強すぎたな~

でも会話しないとダメだよ それはどの夫婦も一緒だよ。

話すんだ~そして感謝の言葉を忘れない……

それから愛の言葉もね。」




「のろけてるみたいで…ごめんなさい~。」




「いえ。すごく勉強になります。」




「春湖ちゃんの意中の人って?」




「幼なじみできょうだいのように毎日そばにいたんですけど

私がどうしても子供としか見えなくて

ずっとずっと拒否してきたんだけど……

最近お互いの両親の都合で同居することになって

ホントは拒否してたけど 求めてきたってわかったんです。

彼はずっとずっと 私のことを大好きだって言ってくれてたのに

私はどうしても素直に受け入れることができなかった。

それで彼を傷つけて…悩ませて

遠ざけたのに……今になってこんなに切ないくらい

愛してるのに気づいてんです。私ってほんとにバカです。」



思わず流れた涙を手でゴシゴシ拭いて

笑顔で二人を見つめる努力をしていた。

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