005
運動会は晴天だった。
朝からテンション高い私は 家の中庭でダンスの練習をしていた。
中庭はうちと秋杜の家と共有していて そこでは週末外でご飯を食べたり 菜園を作ったり
ブランコがあったり……私の大好きな場所だった。
秋杜が急に行くと言い出して 由美ちゃんがうちに来て ママと一緒に弁当を作っていた。
「秋杜ったら なぜ急に行くって言ったのかな~」
「多分ね…ヤキモチやいてんのよ。今日ね春湖が彼氏とダンスを踊るから。」
「秋杜のヤキモチ焼きには参るわね。
ごめんね……春湖…に嫌な思いさせて……」さすがに由美ちゃんもそう思っている様子。
「そのうちほら~秋杜も自分の世界が楽しくなったら
春湖から離れるって~~心配しないで~~」
「秋杜があとせめて四年早く生れたらね~~春湖大好きでよかったんだけど~」
「年上の女だからね~~春湖が秋杜の魅力に気づいた時には秋杜が
そっぽ向くって~~ババァに用はないってね~~」
「あははは~~」
朝から大声で笑ってる。
まったく・・・・人のことババァとか言ってさ~~
私の方が興味ないから~~年下の赤ちゃん男には~~
今日はゆうくんとのダンスでみんなに見せてあげないと~~
うちらの愛は永遠だって~~
ニ階のバルコニーからジッと見ている秋杜の視線に気がついたけど
無視無視~~
きっと目が合ったら ゲームしようってうるさいんだから~~
運動会が始まった。
徒競争だってダントツ一位だし~~
「春ちゃん~~今日王子来てるでしょう?」美穂ちゃんが私の腕を捕まえていった。
「来てるよ~~ぉ。めっちゃウザイから~~」
「幼稚園軍団の女の子たちが 大騒ぎしてたよ~やっぱモテモテなんだ~~」
「最近行ってないみたいだからね~幼稚園。」
「不登園って感じね~~。」
「美穂ちゃん うまいこと言うね~~。今度そう呼んでやる~」
席について順番待ちをしていると ゆうくんが応援団の仕事を終えて戻ってきた。
「なんか緊張するよね~ダンス~~練習した?」ゆうくんが言った。
「練習したよ~」得意げに私
「俺さ~まだ覚えてないんだよね。頼むね~~」ゆうくんの笑顔にキュンとする。
いよいよダンスの番がきて 私とゆうくんは輪の中央に行進した。
最初はみんなでダンスを始めて 途中から外側の輪が座って
4クラスの代表がダンスを始める。
私たちは4くみだったから 3くみが終わるのを待って立ちあがった。
その瞬間だった。ゆうくんを押しのけてちっこいのが乱入してきた。
「え????何よ~~秋杜!!」一瞬みんなが唖然としていたが
秋杜がめっちゃ上手にダンスを踊り始めたので みんなが手拍子しだした。
私とゆうくんはその場に立ち尽くし 秋杜のめっちゃ上手いダンスを
唖然として見つめていた。
三歳の男の子がいきなり三年生のダンスを 三年生以上の踊りで踊る。
周りが盛り上がらない訳がない・・・・。
気を取り直して ゆうくんが私の手をとったら 秋杜がすかさず私の手を取った。
「秋杜!!いい加減にしてよ!!」
めずらしく満面の笑みで踊る 秋杜はもう ギャラリーを魅了している。
私とゆうくんが茫然としてる間に ソロダンスは終わってしまった。
「ごめんね・・・ゆうくん・・・」私が言うとゆうくんは
めずらしく怒った顔で横を向いた。
ゆうくんを怒らせちゃったよ・・・・
頭の中はパニックになって…もう泣きそうになっていた。
「俺の女を泣かすなよ。」秋杜はそう言うと ゆうくんの脛に蹴りを入れて
拍手喝采の中 父母席に戻っていった。
秋杜~~~テメーー覚えとけよ
私は天使の笑顔で私に手を振る秋杜を睨み返した。