056
「風邪…ひくぞ……。」
愛しい声に目が覚めた。
「あ…秋杜…おかえり……あれ?今何時なの?」
「あ…次の日回った……。」
「え?うっそ……。」私は飛び起きた。
ぼんやりと見える時計を見て 2時になっていた。
「2時!?ちょ…高校生が…何してんの?」
「ごめん~ちょっと盛り上がってしまって……。」
「盛り上がってって時間じゃないよ。
進学校の秀才高校生のすることじゃないわ!!
由美ちゃんや尚ちゃんに怒られちゃう!!」
わざとに…大人のモラルを述べたけど……本当は…
嫉妬で一杯だった。
「一緒にいる子もどういう神経してるのか……。」
見えない相手にめちゃめちゃ嫉妬してる。
「あ…誕生日祝いしてくれたんだ。」
だから…それが気にいらないのよ……
「だからって…こんな時間?信じらんない……。」
「わかったって…俺もう寝るから……
明日学校だし……おやすみ……。」
秋杜が部屋を出て行って階段を登る音が聞こえた。
私は入り口に思いっきりクッションをぶつけて
「バカ!!誕生日…終わっちゃったじゃん!!
おめでとうって言えなかったし!!」
頭に来てそのクッションをまた持ち上げて床にたたきつけて
足でぐいぐい踏みつけた。
ごめんね~~クッション災難だね~~
そう思ったけどまた床にたたきつけた。
「ごめんね~~~」
冷蔵庫から缶ビールを出して 一気飲みして
「ふ~~~~~っ」と息を吐いた。
「ざけんじゃねーよ。せっかくの貴重な休み……。
くだらねー時間 返せっていうの!!!」
情けなくて涙がこぼれた。
「おめでとう」
小さい声でつぶやいた。
今までは別に おはようとかこんにちわとかそんな簡単な言葉だったのに
今はすごく大事な言葉になっている。
言えなかったおめでとう……
冷蔵庫のケーキ……
秋杜の好きな私のカレーに 奮発したカツ………。
行き場を失くして……
まるで…ゴミのようだったから……
余計に情けなくなった……。
ケーキーをゴミ袋の中に捨てた。
カレーとカツも一緒に……無残な姿に変わった。
私の心のように見えて…また泣けてきた。
軌道修正しなよ…今までそうしてきたんだから
愛しちゃ…ダメなんだって…
「寝る!!!」
さすがに飲みすぎたようで 目がぐるぐる回った。
しばらく天井を見つめて そのめまいと戦っていた。
秋杜の携帯の音がして耳を澄ました……。
音が切れて秋杜の声が ボソボソと聞こえる……。
暗闇に耳を澄ましたけど…その声は少ししたら消えてしまった。
相手は…誰?
あの女の子の元気そうな後姿を想像した……。
秋杜が軌道修正を始めた気がした………。
一人取り残されて……孤独が押し寄せてきた。