055
「休みとらなかったらよかったな……」
泣きはらした目は熱く重かった。
冷蔵庫の中にはケーキの材料があった。
「…悪くなっちゃうし…一人で食べればいいじゃんね…」
私は時間を忘れてケーキー作りに没頭した。
秋杜の好きな林檎や苺を飾りつけて……小さい頃
お互いの誕生日を盛大に祝ったあの頃みたいに……
最後はチョコペンでホワイトチョコのプレートに
『To Akito By Haruko』と書いて
「できた~~~」と叫んだ。
我ながらいい出来だった。
用意しておいたケーキの箱に入れて冷蔵庫にしまった。
それから秋杜の好きなカレーにカツをあげる準備をした。
グリーンサラダを冷蔵庫で冷やして
「準備万端~~」いつ帰るかわからないけど
作らないと気がすまなかった。
それが素直な気持ちに近づく私の一歩のような気がした。
ゆっくりとお湯につかって
泣きはらした目を温めた。
それからずっと玄関の方へ耳を澄ました。
いつ帰ってくるのかな……。
ついつい缶ビールも三本もあけてしまって
目のまえがフラフラしてきた。
「なんかわかる気がするよ。大人が辛いことから逃げるために酒を飲むって……」
でも一人で飲んでたって楽しいことなんかない。
結局 寂しい自分を哀れんで 悲しくなるんだ。
やってらんない…
「な~んで高校生が楽しく過ごしてて
成人してる私が一人寂しく秋杜を待ってんだよ~~~~ぉぉ
「誰でもいいから 春湖を愛してよ~~。
寂しくて…切なくて壊れちゃうから………
うひゃ~~~ぁぁぁ~~~~」
私は大声を出してソファーにひっくりかえった。
「やってらんない~~~情けないったら……。」
急な眠気で私はそのまま意識を失った。