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胸の中に不安を感じながら・・・・秋杜との間にできた距離が切なかった。
私が秋杜を遠ざけたんだから・・・
それが二人にとって一番いいことなんだって思ってるけど
胸に穴があいたようで…気がつけば秋杜のことばっかり考えてる。
家の中でも秋杜は 部屋にこもるようになって
一緒に食べていた食事時間も ずらすようになって……
あの幸せな日々の貴重さを…思いだすだけで泣きそうになった。
悲しいことにこの距離が
私が秋杜をどんなに愛してるかを教えてくれた。
あの女の子は誰?
どうしていつものように つっぱねなかったの?
一番辛かったのは 秋杜が楽しそうだったから……
私だけにしか見せないって思っていた……
そんなことわかんないけど
自分はそう思い込んでいたから……ショックだった。
秋杜の誕生日の土曜日は一カ月前から 休みを申し込んでいた。
ケーキを作ってごちそうをつくったら…
また秋杜の笑顔が見られるって…そう思っていた。
お風呂からあがった秋杜に 勇気をだして声をかけた。
「秋杜・・・・。」
「ん?」ひさしぶりの会話
「明日 誕生日だから…お祝いしようよ。」
しばらく間があって
「悪い・・・。俺 用事ある・・・・。」 ぼそっと言った。
「夕方には帰るでしょう?」動揺中……
「帰るけど…何時って言えない……。
だから何もしなくていいよ。」
そう言うと秋杜はリビングを出て行った。
何もしなくていいよ……
その言葉を聞いて 鼻がツンって痛くなった……。
誕生日に用事……
私の胸によぎる不安は一つだけだった。
顔がはっきりわからない女の子が浮かぶ。
不安で胸が一杯になった………。