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       047

「平野さん 今日はめちゃめちゃ気合い入ったお化粧ね。」


教育係の上司が笑った。



「すみません。気合い入りすぎですね。」



「そうね……。お客様の印象を考えて健康的で 好印象なお化粧に心掛けてくださいね。」



  わかってます……やりすぎました……。


秋杜が言った通り 私らしくない。

大きな目を囲んだせいで もともと派手顔な私はさらに派手さが強調されている。




  春湖らしくない…か……




早番だったからラッシュの地下鉄にもまれて改札を抜けて

ヘトヘトで外に出た。



「ハ~~~~~ッ~~」



化粧もはげてなおす気力もなくて重い足取りで歩いた。


今日はイヤ~なお客にあたって…散々だった。

それここれも自分の経験のなさだったけど……うまくさばけなくて

クレーマーな客でほんと…イヤになった。


サラリーマンってこんな気分なんだろうな~

そして家庭に戻っていく

愛する家族の顔を見たら 明日も頑張ろうってきになれるんだろうか……



だって生きて行くには はたらなきゃなんないもん……。



イヤなことがあったって…何したって……。



気分転換に

少し時間があったから大型スーパーのテナントめぐりをした。

給料が入ったから洋服を一着買おうかな……。


見まわっているとゲームセンターの前に

秋杜が数人の男女と一緒に立っていた。


  どうしよう……



秋杜はいつものような冷めた顔で違う方向を見ていた。



そこに一人の女子が近づいて秋杜に何か話しかけている。

迷惑そうな顔をあからさまに見せて

秋杜は面倒くさそうな返事をしていた。



  秋杜らしいわ……



正直なとこホッとしている自分がいた。



恋人を見かけたようなそんなドキドキ感で

自分を裏切る行為がないように 祈ってたりして……。



驚くことに次の瞬間だった。

女子は背伸びをして 話にうわのそらの秋杜の耳たぶを引っ張って



「話聞いてんの?」とたんかを切った。


秋杜は目を丸くしてその女子を見て その手を振り払った。



「人が話してんだからさ・…ちゃんと答えたら?

何さまのつもりなの!?」



周りを囲んでいた 男子が二人の中に入っておちゃらけてみせた。

秋杜はムッとした顔をして

女子から離れて違うゲームのところに移動した。



俺様すぎてやっぱ つきあいずらそうだよな……



  でもあの女の子 けっこうすごいかも



丸い目をした秋杜は よく私の前でもあんな顔をしてる……。




制服姿の秋杜は やっぱいくら俺様でも

向こう側の人間に見えた………。



私が社会人になって 学生の秋杜との距離はもっと広がった気がする。




わいわいしてる学生を見ながら

社会人の辛さをかみしめた。

特に 今日は仕事で最悪な気分だったから うらやましかった……。



あの中にいる秋杜は間違いなく向こう側の人間だった……。



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