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       046

二人で朝食を食べる。


秋杜は簡単にトーストニ枚でオッケーだから

私も同じにしてコーヒーを飲んだ。



「なんかさ~俺ら新婚みたいじゃね?」


秋杜の言葉にまたキュンとして



「形だけね~~」ガードーを固く無表情で言い返した。



秋杜がニコニコして私を見つめる。



「なんか秋杜って…そんな顔もするんだ……」


子供のような可愛い笑顔と いつもむくれたような人をこばかにした秋杜と

まるっきり別人のようで……



「誰にも見せないっていうか…俺も知らなかった……」




「何が?」




「俺に幸せだとか楽しいだとか…人に何かしてやりたいとか

そんなありふれた感情がこんなにたくさんあるの知らんかったから…」




私はドキドキして下を向いた。



「春湖と一緒にいて…俺 めっちゃ今幸せだから…

人生で今一番 楽しい……。」



私はなんて答えたらいいのか

慌てて立ちあがって 



「あ~~~もうこんな時間~~

お化粧して化けてこなくちゃ~~~」




残りのコーヒーをすすって大慌てでリビングを

飛び出した。




   めっちゃ幸せだから…



素直に言う秋杜の顔をまっすぐ見られなかった……。




   私だって幸せだよ…本当はね……。



だけど…この距離を保ってての幸せだって私は思うんだ。



私と秋杜が近づいたらきっと

私はイヤな女になって いつも秋杜に嫉妬して……


そして嫌われてしまう



それが怖いんだ………。



  これでいいんだよね……。



秋杜の胸に寄りかかりたい・・・

そんな心を今日は理性でとどまった。



理性 対 欲望




まーくんの気持ちが今になって少し 理解できた。



理屈じゃなくて… 理性が欲望に負けることの人生の中では

めずらしいことではないのかもしれない。




  私も好きよ


って言えたらどんなに楽なんだろう。




そんな自分を隠そうと私は しっかりとした化粧をした。

黒いアイラインでしっかりと目の周りを囲んで マスカラを丁寧につけた。



  私は大人なんだから……




秋杜とは生きる場所が違うんだ……。




秋杜が丁寧に乾かしてくれた長い髪の毛を一本に束ねてひねって

大きなバレッタで止めた。



鏡の中にいるのは…さっきとは違う私。



通勤用の洋服に着替えれば

鏡の前に立つ私は やっぱり秋杜との距離を感じる。




バックを肩にかけて 階段を駆けおりた。



秋杜もちょうど出かけようとしていた。



「いってらっしゃい。」秋杜に声をかけた。



秋杜は爽やかな制服姿で私を見つめた。



「しっかり勉強して来いよ~~学生さん~~」





「春湖らしくない……。」秋杜が私をじっと見つめた。




「そう?だって社会人だから私……」




「化粧濃いし…春湖には似合わない。」


秋杜の顔がさっきとは

全然違う顔に変わっていた。




「あのね~~…まっお子ちゃまに言っても仕方ないけど……春湖は社会人です。

お化粧もするし パンプスもはくし 酒も飲むし~」




「いってきます……。」


秋杜はそのまま玄関のドアを開けて 外に出て行ってしまった。




  いってらっしゃい…秋杜……



届かない声でそう言った。

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