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「ダメだって…高校生にときめいてどうする!?
それも赤ちゃんの時にはすべてを見ていた秋杜を男として
見るなんて…そんな…何やってんだろ私……」
秋杜への想いはもう止められない
だけど…それだけは絶対に秋杜には知られたくない。
秋杜の小さい頃の思い込みだけで私にアプローチかけてくるけど
実際……それだって思い込みだけであって
それがマジだとは…思えない。
男なんて・・・・
信じちゃだめよ~~~
だって生きる世界が違うんだもん
秋杜は初々しい青春の香りのする制服の中で
私はまだ吸ってるやつもいるタバコの臭いや…酒の臭い
生活のかかっている スーツの中で生きている。
この違いは多分 秋杜があと10年しないとわからないだろう
生きるために働く
暮らしていくために我慢する
私だって社会人になって そんなことが見えてきた今日この頃・・・・。
やっぱりこの年の差は…越えられない。
マジになって秋杜に
「やっぱ若い方がいい」とか言われたら私の立場は???
こんなこっぱずかしいことは…ないでしょう……。
秋杜の言葉を本気にしてたら…絶対きずつくんだから……。
もう…裏切られたくないもん……。
カートを押している私のかごに
秋杜がシャンプーとリンスとムースとボディソープ―を入れた。
こいつ…まだわかんないのかしら……
「これって私用なの?」
秋杜はニッコリ微笑んだ。
「あのね・・・・。私はあんたのペットかい?」
秋杜の笑顔に何も言えなくなって私はレジに並んでいた。
「あれって~~A組の 新居くんじゃない?」後から声がした。
「あ~~そうだ~~!!私服もめっちゃいい~~」数人の黄色い声がして
振り返るとお菓子売り場で5人くらいの女の子が騒いでいた。
「なんか女にはめっちゃそっけないらしいよ~」
「あんなイケメンなら仕方ないね~許すわ~」
「他の学校の女子にも有名なんだって~
同じクラスになりたかったな…」
そうだろうな…秋杜のカッコよさは ハンパない……。
私だって同じ年代だったら絶対今の自分の状況を神に感謝するから~~
レジを通ったら 秋杜がかごを持ってくれた。
きっとあの女の子たちが私と秋杜の仲はなんだって噂してるだろう。
「今日の夕飯 春湖だろ?」
「なんかプレッシャーだな・・・秋杜 美味いからさ」
「俺さ~春湖のカレーが食いたい~」
「そのつもりだったし……」
「やった~~ぁ~~」
秋杜が子供のように喜んだ。
こいつこんな顔して笑うこともあるんだ……
意外だな……
知らなかった秋杜が少しづつ現れて…でもそのたびに
私は激しくときめくから
その心をおさえようと力が入る……。
多分 あの25歳の女のように
秋杜が全然知らない子だったら私だって
おねえさん気分でいろんなこと教えてあげたいって 思うだろうな……。
秋杜は私から荷物を取った。
「いいよ~少しくらい持つよ~」
歩き出した秋杜がふり向いた。
「俺は男だからな~大事な女を守ってやらないとな~」
いつもの小憎らしい顔でそう言った。
でもまた胸を打ち抜かれて…私はこれからの同居生活で理性がいつ
崩れてしまうんだろうと不安な気持ちになっていた。