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王子の名前は 私が春生れで 春湖 だったことで
秋杜 という名前になった。
ひさしぶりの赤ちゃんということで秋杜は チヤホヤされながら育った。
泣けば自称 隣の両親が現れて 代わりばんこの子育てとなり
『王子さま』ともてはやされて わがままで自分勝手な男の子に成長し始める。
幼いながら その子育てに疑問を感じながら
しかし……私は私の世界が忙しくて 横目で大人たちの間違った子育てを見ながら
大人になったら…この子はどうなるんだろ
子供心にそう思っていた。
そう言う私も 姫気質 だったりするから
秋杜が生まれるまでは 間違いなくあの間違った世界で生きて来たのかもしれない。
私は 幼稚園時代に愛を誓い合った ゆうくんとラブラブ小学生になっていて
相変わらずモテモテだったゆうくんに 近づこうとする女子には
得意の 眼力で排除したり……結構忙しい毎日を送っていた。
秋杜が 成長しだしてくると なぜか秋杜は私を求めた。
「だっこ~~」 つぶらな瞳で手を差し出す姿に 由美ちゃんやママが抱いても
「はっこ~~」「はっこ~~」と私を呼ぶ。
「春湖 王子さまがお呼びだぞ~~」
「春 今テレビみてるっしょ~」私だって面倒くさいから・・・・
「はっこ~~」秋杜が叫ぶ。
「わかるんだな~~春湖が王子の将来の嫁だってこと~~」
パパと尚ちゃんがビールを飲みながら笑う。
「やだよ!!こんなわがまま王子~」私が無視していると 秋杜はひっくり返って大泣き。
結局みんなが
「うるさいからなんとかしてくれ~~」と言うから
渋々 秋杜を抱いてやると ニヤッとして泣きやむから めっちゃムカつく……。
最近 秋杜のこういう顔が憎たらしくて仕方がない。
思いを遂げるまで わがままし放題 それが達成されると赤ちゃんのくせに
ニヤッと笑う。
「ほんと可愛くないから……」確かに赤ちゃん返りを私自身がしてるのもあるけど
このわがまま自分勝手男が 大嫌いだった。
「はっこ~~」 「はっこ~~」
秋杜が一番先に口にした言葉だった。
「普通 ママじゃない?」由美ちゃんもさすがにガッカリしてる。
私は この時から気がついていた。
秋杜が 私の胸に抱かれている時 ドキンとするくらいの視線を感じていた。
わがままで自己中で…さびしがりやの強がりな 秋杜 は
俺様王子となって 私の人生に大いに関わってくることになる。
五歳の年の差が 二人を翻弄させながら………。