022
その子の話は 私を這いあがれないほどの地獄に突き落とした。
先生が一緒にいたのは婚約者で とっても素敵な人だったとか
最初 先生はその子のことに気づかず
めっちゃアツアツのラブラブで…新婚さんかなんて言って見ていたら
なんと塾の小笠原先生……。
その子のおとうさんが
『子供がいるんだから…こんな外でイチャイチャして常識がない』と激怒するほど
見てらんないくらいのイチャイチャぶりだったらしい。
私には?
実家でおばあちゃんの法要があるから
そう言ってたし……
いつものように親戚付き合いで忙しいからあまり連絡はとれないと言って
メールも我慢していたけど
昨日のメールで
『帰ってきたよ~。実家のそばの海に通って日焼けしてきたよ。』
なんて くっさいメールしてきたんだ。
最初はその子の話 信じたくなかったけど
つじつまのあうことばっかで……それにまーくんが
「このことは塾の生徒には絶対内緒だぞ。
これが本部にばれるとやめさせられるから 頼む。」そう言って何度も頭を下げたとか。
「婚約者・・・いるんだ~」
「先生がいない時にお話してみたら 二人は遠距離恋愛中なんだって~
もう付き合って三年たってて今年のお正月に婚約したんだって~
先生の本社転勤を待って 結婚するらしいよ。」
「本社転勤?」
「そう~ほらうちの塾 全国展開だから~
ここの後はもう本社に戻るんだって~なんか今年の冬とか言ってたよ。」
頭が最初はガンガンしていたけど
最後の方になるとどんどん冷えてきて頭が痛くなった。
ふざけんなよ……
塾が近づいてきて とっても顔を合わせる状態じゃなかった。
「今日…なんか行きたくないな~~行くのやめよっかな~~」
と言うとその子も
「私も行きたくないんだよね~」と言った。
「じゃあ…お互いに電話かけあってお休みしよっか~」
頭が痛いのは本当だった………。
帰って熱を計ったら 37.5度あった。
「風邪ひいてたんだ……。」
あいつ…どうしてやろうか……
ベットに入っても はらわたが煮えくりかえっていた。
婚約者がいたのに 私を抱いてたんだ。
メールができないのは彼女がいるから……。
携帯が鳴ったら 私には「会社」と言って遠くに離れて
にこやかに話していた。
会社じゃなくて…あれは彼女だったんだ。
愛してるって言ったのに……
春湖…可愛いって抱いてくれてたのに……
全部全部 嘘で固められていたの?
転勤するまでうまく私を利用しようとしてたんだ……。
腹が立てば立つほど 情けなくて悲しくなる……。
嘘におどろされて私は まーくんの都合のいい女になっていたんだ……。
涙が流れる・・・・。
情けない涙と怒りで……熱もどんどん上がって来た。
「めずらしいね~春湖が熱出してるなんて……」
ママがお粥を持ってきた。
涙目の私に気づいて
「具合悪いの?」と覗き込んだ。
私は 「すっごく悪い」と答えて布団をかぶった。