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「やべ・・・俺学校に連絡してなかった。」
やっと落ち着いた病室で秋杜が立ち上がった。
「あ・・・大変じゃん!!学校行っといでよ~
大事な書類もあるんだし……どうせ私も安静だし…赤ちゃんも
まだ戻って来ないし 夕方来て。」
「大丈夫か?」
「うん!!しばらく寝るし~疲れちゃったわ……」
「そっか~じゃあ行くわ。
夕方まで待っといて~」
秋杜は私の髪の毛を撫ぜて キスをした。
「行ってきます。」
「いってらっしゃい おとうさん~」
私がそう呼ぶと秋杜は照れた顔で笑って 病室を出て行った。
なんだか夢みたいだった。
思いがけないアクシデントで想像と全然違ったけど
でもそれはそれでいい思い出だった。
お腹がぺしゃんこになって……もうここで
赤ちゃんの動きを感じられないんだなって少し寂しく思った。
お腹の中で元気に動いてた子があの子だったんだ。
生れたばかりなのに なんだか二重の赤ちゃんだった。
「おかあさんに似て 二重まぶただね~
将来アイドルグループかな~」看護師さんが産湯をつかって
スヤスヤと眠る赤ちゃんをベットに乗せて処置をしている私の横につれてきた。
「ホントに大きい……」
先生が
「まだ予定日から一カ月あったから もしかして予定日までいたら
4キロは越してたかな~」
そう言って笑った。
「4キロですか~!?」
「3600だしありえるかも~」看護師さんが笑った。
「あ…よかった…今でもこんなに苦しかったのに……」
赤ちゃんも疲れたんだね……
爆睡中~~
可愛い・・・・めっちゃ可愛い
あの寝顔を思い出して 私は睡眠へと入って行った。
幸せな夢ばかり見ていた。
萌が出てきて 笑顔で「よかったね」と笑った。
光太郎も笑顔で・・・登場する人がみんな笑顔だった。
うれしい
今日は最高の日になった。
しばらく寝不足だった私は久しぶりにぐっすり眠って
昼食に起こされたけれどまたそのまま眠ってしまった。
「春湖・・・春湖・・・」揺り起こされて目を開けると
尚ちゃんと由美ちゃんの顔
「ほら…もう起こして下さいって言われたよ。」
「ん~~今 何時?」
「5時だよ。」尚ちゃんが笑った。
「眠り姫のようにずっと寝てるって 看護師さんが笑ってたわ。
おめでとう春湖~~よく頑張ったわね。
春ママは明日の飛行機で来るって。」
「あ~そう~由美ちゃんたちもわざわざごめんね。」
「秋杜から電話もらってビックリしたわ。
だって予定日よりずい分早くて 心配したけど……立派な赤ちゃんで……」
由美ちゃんの目が潤んでいた。
「ほんと立派でしょ?さすが俺様の子供だよ……。」
「なんかあの落ち着きようは…秋杜より俺様っぽいな。」
尚ちゃんが言ったから
「冗談でも言わないで~~」私が首を振ると
「それは大変な子育てになるわよ~」由美ちゃんが爆笑した。
「もう歩いていいんだって。一緒に赤ちゃん見に行こう。」
由美ちゃんに抱き起こされて 体を起こした。
「これから大変よ。頑張ってね。
俺様 二人の子育ては………。」
「子育て?新米おとうさんがおこりそうね。」
三人の笑い声が病室に響いた。