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「香澄に会ってくるよ。」
歌を突然やめて光太郎が言った。
「何度か会いに来てくれてたんだけど…素直になれなくて……。」
「どうしてですか?」
「今まで俺の全部をさらけ出してきたって平気だったのに
ちょっと距離を置いたら カッコ悪い格好を見せたくなくなって…
意地になってるのかもしれない。」
「素直になりましょう。
そしたらきっといろんなものが見えてくるから。
私も素直になったら…秋杜が抱きしめてくれましたよ。」
「素直ね・・・・」光太郎は笑った。
「私……光太郎さん好きですよ。」
「へ?いいの?んなこと言って~」
「二番目です。」
「なことだろうと思ったよ。」
「私は香澄さんの次にルイトのファンですからね。」
「はいはい・・・・。
見ていてくださいな。」
光太郎は私の頭をポンポンと叩いた。
家の前に車が停まった。
「ありがとうございます。」私が言うと
「こちらこそ……神様はさ~俺の願いを一つかなえてくれたよ。
春湖に会いたいなって……。秋杜にはかなわないけど……二番目でもいいよ。」
「私だって二番目なんですからね……。」
「じゃあな……もうきっと……いや
いつかまたきっと偶然に会える日まで……。
いい子産めよ~。」
「ルイトが輝いてて 光太郎が幸せになってくれることを祈ってます。」
助手席のドアを閉めた。
光太郎の車がゆっくり発進し
バックミラー越しに私と光太郎の視線は交わっていた。
恋とも愛とも違うけど……
愛おしい存在だった………。
そして誰よりも優しく抱きしめてくれる人……
光太郎の車が角を曲がって消えてしまっても
しばらく私はその場所に立ちつくしていた。