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       202

由美ちゃんが帰っていつものまま二人だけの生活になった。



秋杜のいたわりの中 つわり症状もなくなって

私は仕事に復帰した。

まだお腹も目立たないから 今のところは 何事もなく

会社の人たちからもいたわられ 幸せな毎日を過ごしていた。


毎日が幸せで お腹の子供が順調に育って行く。



雪が降り出して 滑ると危ないからと

秋杜が仕事に行く私を心配した。


「大丈夫だよ。」


かかとのないブーツに 秋杜が買ってきてくれた滑り止めを装着

ツルツル路面も怖くなかった。



秋杜は勉強を狂ったようにしていた。

大学は行かないけど 親不幸したんだし 上位で卒業してやる

そう言った。



先生からは何度も由美ちゃんに電話がきて

「国立を狙わせましょう」と言われてるらしい。



秋杜が美容師の専門学校に行くということで

学校は驚いた様子だった。



「もったいない」



私もそう思うけど……秋杜は希望に満ち溢れていた。

私を抱きしめながら 語る夢は どんな店にして…

私たちはどのくらい幸せに暮らしているのか……


そんな素敵な話で 私たちは夢の中へ……。




  幸せすぎて怖いくらい



五か月にはいって胎動を感じた時は 感動した。


「俺にはわからない」動くと秋杜が耳をつけるけど

なぜか秋杜が耳をつけると動かなかったから


「こいつ~にくたらしいな~」と秋杜がふてくされる。





季節は冬を越え 年を越え そして仕事をやめる日がやってきた。



先輩たちは

「もう~先を越されて……悔しいわ。」そう言いながら

真っ赤なバラの花束をくれた。



「うわ~~きれい~~ありがとうございます。」



「健康ないい子を産んでね。」



「短い間でしたが優しくしていただいてありがとうございます。」



入社した時は辛かったけど 思い起こせば

素敵な思い出がたくさんだった。

まだまだ働いていたい気はしたけど

新しい人も決まって 私も6カ月を迎えて とうとうお腹も立派になってきたから

ここを去ることに決めた。



みんなに別れをつげて ハラハラ舞う雪の中を

真っ赤なバラの花束を抱きかかえて歩く。


道行く人がバラの美しさに振り返るから 恥ずかしくなった。





ブティックの前を通り過ぎた時 


「春湖」と名前を呼ぶ声が聞こえて私は立ち止った。




雪の中を振り向くと 白いコートを着た男の人が立っていて

私はそれが 光太郎だとすぐにわかった。



雪と光太郎がまるで映画のワンシーンのように美しくて時が止まった。

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