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夜は落ち着かなかった。
今頃 ママたちから言われて 秋杜はなんて答えを出したんだろう。
今回の妊娠を快く喜んでくれた親たちの
親孝行のためにもその提案をのむことが 秋杜にとっても一番なんだと思うけど
離れたくない
秋杜と一緒に入れる時間が 私にとっての安らぎなのに
そして赤ちゃんにとってもきっと一番いいことに違いがない
だけどもしこんなことが世間に知れたら
光太郎の時のような 人間の視線と口が怖い あの恐怖が蘇る。
後ろ指さされる関係なんかじゃない そう思うけど
世間では年上と高校生
相手の親が訴えれば 私は犯罪者になるんだから……。
秋杜が卒業すれば 一緒に暮らせる
でもそれまでの期間を考えると気が狂いそうだった。
不安なまま朝を迎える。
朝 デパートにかける前に課長に電話を入れた。
「すみません…課長…こんなことになってしまって……。」
「仕方ないよ。授かりものだからね。
それで春湖ちゃんが幸せになるんだったらそれが一番だよ。」
「ありがとうございます。これから電話を入れて話します。
社長には課長からお伝えいただけますか?」
「わかったよ みんな残念がるよ。
春湖ちゃんの受付嬢は評判よかったからね。
ビックリすると思うけど……退院はいつ?」
「今日先生に聞いてみます 食欲は戻ってきてます。
あ…一世さんによろしく……」と言いかけると
「今日行くって言ってたよ。」課長が言った。
一世さんに会いたかった……
「よかった~私も会いたかったんです~」
一世さんに相談したかったから私はホッとした。
デパートに電話をして状況を話すと 驚いていた。
とりあえず退院して調子がよいようだったら 出勤して
これからのことを決めることになった。
もし…秋杜のそばにいることを許されるなら
お腹が目立つまで働きたいと思っていた。
親がサポートしてくれると言っても すべてに甘えるのはイヤだった。
自分の責任として
ギリギリまで仕事ができたらいいなと思っていた。
私ができること
秋杜のそばで暮らしたい……。
やっぱり離れて暮らすのはイヤだ……。
秋杜はなんて言ったんだろう。
私は秋杜に従うつもりだけど……少し不安だった。
秋杜が高校生でいる今……
卒業するまでは私と子供の存在は闇の中に葬られる気がした。