表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
199/223

       196

正面玄関に 面会ギリギリに飛び込んできた秋杜は息も荒く

ハァハァしていた。




「いいのに…ムリしなくて~」



「顔見たかったし~もう一日も離れていたくないんだから……」

秋杜の言葉がうれしかった。



「かあちゃん車に乗せてくれたからなんとか五分は顔見ていられる。

明日から制服で来るかな。これが余分にロスすんだよな。」



「ダメよ~~それはマズイわ。

それじゃなくても 弟?とか思ってるんだから……。」




「若かったらダメかよ。そこらへんのダンナなんかより

俺の方が奥さんを想う気持ちは深いんだからな。」



私は威張ってる秋杜を見ておかしくて笑った。




「まだ退院できないのか?」



「明日 先生に聞いてみる。」



「今日から騒がしいぞ。かあちゃん予約してたから

車出してもらえたけどもうみんなでき上ってる。

春パパに説教されたけどな~」



「パパが?なんて言ったの?」



「春湖を大事にしろよってさ~~

だから あたりまえだろ って答えたよ。」



「よかった~~。」



まだあの話はしていない様子だった。

私からした方がいいのか悩んだ末 結局話せなかった。



  離れて暮らす……



それは私たちにとってはあまりに残酷だった。

秋杜が納得するとは思えないけど

でも・・・・秋杜のことを考えると そうした方がいいのは完全に正解だから




「どうした?」



「あ…ううん~大丈夫よ。」



「先生にさ…聞いてみて……。

赤ちゃん生れるまで……我慢しないとダメなのか……。」



秋杜が耳元で囁いた。



私も一瞬言葉を失ったけど 秋杜の目はギンギンに光っていた。



「バカね~~」



「俺にとっては…めっちゃ重要~~赤ちゃんに悪いなら耐えないとなんないし~~」



「私が聞くのは……勘弁してよ~

なんか本でもかって勉強して……あ…ネットで調べたらわかるよ……。

恥ずかしくて聞けないよ・・・・。」



「だよな~~~。ふぇ~~~

もっと前倒しで襲っておくんだったな~~。

一年くらい我慢できるように~~~。」

秋杜は前髪をかきあげた。



「まったく~~~。」私は秋杜の高い鼻を思いっきり握った。





「いて……」




「赤ちゃん……パパおかしなこと言ってますよ~

聞いてますか?」



秋杜はゲラゲラ笑った。



「パパは正常な若い男子ですからね~~

でも赤ちゃんの健康に悪いなら我慢しますよ~

エライでしょう?聞こえたか?」



秋杜は私のお腹に向かって言った。




さっきの話をきいて秋杜はなんて言うんだろう。




こうやって若いことで注目を浴びている秋杜

通りすがる人がもう一度秋杜を見返す。



「え・・・まさか・・・パパ?

高校生みたいじゃない?」そんな声だって聞こえてきた。




「俺が守るからな。

これからは春湖と子供を守っていくんだ。

頑張るからな。

もう少し 待っててくれよ。」




秋杜はそう言うと私を静かに抱きしめた。




「うん…。私は秋杜を信じてるよ。」




面会終わりの放送が流れた。




「じゃあ また明日来るからな。」



そう言うと秋杜は正面玄関に向かって歩き出した。



こんなくらいでも離れているのが辛いのに……

秋杜が卒業するまでって……長すぎるよね。



でも…秋杜のためにそれがいいなら

私は我慢するしかないじゃん……。



暗闇で手を振る秋杜が消えて 私はすごく寂しい気持ちになっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ