194
由美ちゃんが帰ってからしばらくして秋杜が来た。
「失礼します。」
部屋の人達の視線の中 秋杜は入って来た。
「どうだ?」
「うん 嘘みたいに吐き気がおさまって……お腹すいたよ。
夜まで我慢するの辛いくらいよ。」
「よかった~」
秋杜はイスに腰かけた。
「かあさん来ただろう?」
「うん。由美ちゃんも尚ちゃんもホント変わってる~」
私は思わず笑った。
「きのうかあちゃんと電話で話してさ
俺はできなくて できなくてやっとできた子供だったから
妊娠した時もアクシデントでずい分入院して
無事に生まれますようにって…大変だったらしい。
もう今回のがしたら…ないだろってプレッシャーでさ~~
だから俺が生まれた時 俺のしたいことをしてあげよう
一番の理解者になって俺を幸せにしてやろうって誓ったんだってさ~」
「そうか・・・。
そうだよねだから私と秋杜の間には五歳の壁ができちゃった。
その間も必死だったんだね。」
「俺はその五年を恨んで 生きてきて
今思えば そんな態度は親をずいぶん傷つけてたのかもしんないな~」
「そうね……。私の態度もきっとそうね。」
「でもおまえのことでは ほんとバカみたいに
俺のバックアップをしてくれてたから……
少しこうなるのは早すぎだったけど……春湖さえよければ
うれしいことだって言ってた。」
「私は幸せだよ……。秋杜の子供を生めるのは……。
後悔なんてしないけど……ただ秋杜の将来が心配……。」
「なんで?俺の人生なのに春湖が気をもむことないだろ。
好きなようにやるさ~だけど学校だけは…卒業してくれってさ……。
そこが俺の親孝行かってプレッシャーだけどさ。」
秋杜が優しく髪の毛をなぜた。
「洗ってないから汚いよ~」
その手を止めたけど 秋杜は構わず指を動かした。
「春湖のおかげで自分のやりたいことに気づいたんだ。
最初はまだまだ修行だけどいつか家の下に店を持って
いつも家族を見てられる未来にしたいな……。」
秋杜の顔は嬉しそうだった。
「私もその夢 応援するから。」
髪の撫ぜてる手に自分の手を添えた。
「幸せにするからな。しばらくは頼りないけど……ついてきてほしい。」
「うん……。」
握り合った手がお互いの体温を感じて
幸せな気分になった。
「頑張ろうな。」
秋杜は私のお腹を優しく撫ぜて微笑んだ。