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秋杜からのメールでは
『話しておいたから。春湖は心配しないでゆっくり休めよ。』
簡単なメールだった。
きっとその内容に質問をいれたところで性格上
答えることはしないだろうから
メールは簡潔 絵文字さえめったにはいらない主義の秋杜だし
私もそれ以上は聞かなかった。
パパとママ怒ってるだろうな
そう思うと気が重かった。
面会時間になって 病室の人たちも動ける人たちは面談室に移動して行ったけど
私は点滴を見つめながらベットの上にいた。
あ~~もう・・・帰りたい
嘘のように吐き気がおさまっていて
今日の朝は全部食べて 今も足りない気分だった。
廊下をパタパタ走る音が聞こえて誰かが飛び込んできた。
「春湖~~」由美ちゃんだった。
「あ・・・由美ちゃん……ごめんなさい……私……。」
「大丈夫?痩せて……辛かったでしょう……。」
「うん……あ…それよりごめんなさい……こんなことに……」
「確かに…早いけど…遅かれ早かれそうなる運命だったと思って…
若くして孫がいるのも悪くないかって……春湖は
これでよかったの?私たちは秋杜の気持ちをずっと見てきたから…
二人がこうなって喜んでいるけど……」
「私はもうママになることしか考えてないもん……。
ただ秋杜の将来が妥協になるんじゃないかってそれが心配なの。」
「妥協?秋杜の幸せは春湖が一番だったから
きっと何とも思っちゃないわよ。」
やっぱりここの親は少し変わっている。
私は子供を一番に想う由美ちゃんたちに感動していた。
「秋杜が幸せならそれでいいわ。」由美ちゃんは優しく微笑んだ。
「ありがとう……。安心した……。後はうちの親ね……。」
「昨日電話したわ。春パパちょっと怒ってたけど
大丈夫よ。私たちもこうなること小さい頃から望んでたし
なかなか頑固に春湖が受け入れなかったけど……遅かれ早かれって意見で一致。
春パパもママも 春湖が幸せなのが一番って考えだし
ちょっと早かったけど…春湖が親になる決心してくれたなら
私たちはバックアップさせてもらうから。」
「ありがとう~~~」
嬉しくて涙が出てきた。
「春ママたちも明日 こっちに来るって言ってたから
秋杜ともよく話してみるから。
春湖は早く食べれるようになって少し肉つけて……やつれちゃって
可哀そうに……。」
由美ちゃんが頭を撫ぜてくれた。
「よかった……私…赤ちゃん産めるのね……。」
「元気な赤ちゃん産んでね。
ただ…ばれたら仕方がないけど…秋杜の学校には知られたくないのよね。
きっと大問題になるでしょ…秋杜にも言ったんだけど
高校はどんなことがあっても卒業しないとって……
秋杜は辞めて 修行しにいくって言ったんだけど
学業してる間は 騒がれたくないわよね。」
「うん。私もそう思うよ。」
「とりあえず早くよくなってね。
それから考えよう。」
「うん。わざわざ来てくれてありがとう。」
「週末は尚も来るからね。
しばらく泊まって行くわ。秋杜ともよく話したいし。」
「うん。」
「ありがとう由美ちゃん……。」
私は由美ちゃんの手を握った。