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秋杜に抱きしめられて朝を迎えた。
目を覚ますと 安らかな寝息をたてている秋杜がいた。
幸せ……
愛しい人の腕の中で朝を迎えられる毎日に感謝した。
「昨日はごちそうさまでした。
俺は二杯もおかわりしてしまいました。
春湖が食べたがってたんで あとは冷凍にしておきました。
俺がいない間 いろいろありがとうございました。」
一世さんは少し驚いた様子だったけど
「秋杜くんって想像してたよりずっと大人なのね。
なんか安心したわ。
その辺の高校生だったら…大丈夫だろうかって心配してたの。
春湖ちゃんが命かけて大好きな人だから……
正直なところ心配してたから……よかったわ。
夫もきっと安心するわ。」
「そう言ってもらえると嬉しいです。
これから俺…もっとしっかりしないと……
父親になるんだから……。」
「そうね。子供ができると女は母になるから夫には大人になって
もらわないと…先行き不幸なのよ。
協力してそれからもっともっと愛してあげてほしいな。
自分の分身を…産んでくれるんだからね~」
一世さんの言葉には重みがあるから
「勉強になります。
これからも俺たちのこと…よろしくお願いします。」
秋杜は頭を下げた。
私も
「一世さん……よろしくお願いします……。」
一緒に頭を下げた。
病院に行くと 一斉に注目の的になった。
私も若い母親だけど…秋杜は大人くさく見えても 妊婦さんたちの夫から見れば
やっぱり子供だから……
いったいいくつなのかしら
そう思ってるオーラーで一杯だった。
先生も秋杜を見て 一瞬ぎょっとした顔をした。
「ずいぶん…若いけど…高校生かい?」
カルテにかかれている秋杜の年を見て 困惑していた。
「はい。でもずっと長くから彼女を愛してたので
今回のことはすごく嬉しいです。卒業したらすぐに結婚しようと思います。」
「ご両親は?賛成してくれてるのかな?
サポートがないと……難しいんじゃないかな。」
「今日 話しますがきっと支えてくれると思います。」
先生は笑顔になって
「そうか。よかった。」そういうと優しい顔になった。
私は 即 入院になった。
そのまえに二人に先生が エコーを見せてくれて
この間は ご飯粒だった赤ちゃんが しっかりと人間の形をして私の
子宮の中で遊びまくっている。
「うわ~めっちゃ可愛い!!」
「この時期だけ全体像が見れるから貴重なんだよ。
ちゃんともう人間の形をしているだろう。
おかあさんはつわりでひどいけれど 赤ちゃんは快適そうだな~
それにしてもよく動く子だな 元気一杯だ~」
先生が驚くほど 赤ちゃんは子宮の壁を元気に蹴っては
楽しそうに動いている。
秋杜はモニターにかぶりついて
私のお腹と交互に見て
「女の人ってすごいですね~」そう言った。
「大切にしてあげなさい。これから女性は戦いだからね。」
先生の言葉に力強くうなずいた。
「俺のことは大丈夫だから安心して 治療うけろよ。
毎日見舞にくるから メールもするし~早くうまいもの食べような。」
「うん。」
「今日親に連絡すっから。春湖んちにも……。
詳しくはまた明日な。」
女性ばかりの病室だから 男の人は長居しては迷惑だと
一世さんが教えてくれて
秋杜は 一世さんと一緒に帰って行った。
会社に連絡して
「入院することになって……またあとで
詳しいこと連絡します。」
妊娠って言ってもよかったんだろうかとか言葉が見つからなくて
慌てて電話を切った。
本当のこと連絡しないと……
このままでは…まずいだろうし……
私はそれから点滴を入れられてトイレ以外は絶対安静になった。
四人部屋のベットには いろんな年齢の妊婦さんがいて
それぞれに何かアクシデントと戦っているようだった。
心配ごとが頭の中にたくさんあった。
これからのこと
仕事のこと
秋杜の学校や将来のこと
そして生活のこと
親はなんて言うだろう……
秋杜の親はおいといても うちは…?
うちもどっちかと言うと 一緒になっちゃえって楽しんではいたけど……。
赤ちゃんを安心して産める環境にするには
どうしたらいいんだろう。
来年生れた時点でも 秋杜はまだ高校生だから……。
幸せを感じる半面 不安感もぬぐえない私がいる。
でも…秋杜を信じて・・・・・
強烈な眠気に誘われて 安心した私はひさしぶりに
深い眠りについた。
遠くで赤ちゃんが元気に泣いている
心地よい気分………。
夢の中へ……秋杜に会える夢だといいな~・・・・・・。