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「美容師~」秋杜の言葉に
「び…美容師!?」思わず大きな声を出した。
想像さえしなかったその職種に私は 驚いた。
「春湖の髪の毛を触るようになってから…本読んでアレンジとか
覚えたりして 魅力に取りつかれてたんだ。
いつか自分の家に店を作って……そしたら仕事しながらでも
春湖や子供たちといつも一緒にいられるだろう。」
「素敵ね……。でも 尚ちゃんの後継がなくていいの?」
「とうちゃんはおまえのしたいことしていいぞって言ったんだ。
人生きめられちゃ つまんねーだろってさ。」
「尚ちゃんらしいね~」
「俺の親は変わってっから。
おまえのことを好きだったら なんとか叶うように仕組む親だぞ。」
「仕組む?」
「こうやって一緒に住まわせようと嘘をつく。
あれはかあちゃんの機転だからな 朝 起きれないとかは。
俺は自立した男だから そういう面では迷惑かけないからさ~」
「そうだったね~ホント変わった親だね。」
「俺のことを無条件で一番愛してくれる…俺は変わり者だけどさ
親には感謝してるよ。良き理解者だし
それに萌と関わりだした時も かあちゃんはぐちゃぐちゃになるって
予想してたようだし……かなわんな~って思った。
俺も…ああいう親になりたい。」
秋杜は私のえぐれたお腹に耳をつけた。
「とうちゃんだぞ~~きこえてんか?
俺はおまえの一番の理解者になるから安心しろよ~」
お腹に向かって叫んだ。
「聞こえてるよな?」
笑顔で私を見上げる。
「うん。聞こえてるよ……。」
「春湖…こんなお腹が膨らむのかな~
お腹すいてるんだろ?」
「明日ね…病院に行ってくる……。
入院になるかもしれない……。」
「その方が安心だよ。
春湖と早く一緒に メシくいて~し……。」
「一世さんが迎えにきてくれるから……。」
「俺も一緒にいくよ。父親だし……。」
「パパは高校生なんて言ったら先生 驚くだろうな。」
「多分な~~」
秋杜はソファーに私を横にして 食べ終わった食器を洗いだした。
よかった………
秋杜はやっぱり……秋杜だった……。
小さい頃から 私の全部を受け入れて 好きだっていってくれる。
私たち これからの壁を乗り越えて行けるね……。
心地よい水の音を聞きながら 目を閉じた。