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「私…ママになっていいのね……。」
「うん…。俺はおとうさんになる……。」
現実は後で考えて 今は少しこの幸せに酔っていたい。
私は秋杜の腕の中にいた。
「お腹……すいた……。」安心したら急にお腹が空いた。
しめつけられてお腹とおへそがくっつくぞ~みたいな感じで
「一世さんのごちそういただこう。
俺が用意してやるから座っとけ。」
秋杜は手早く割れた皿を片づけた。
「ごめんね……。」
厚いカツを皿の上に乗せた。
「食べれるか?」心配そうに秋杜が言った。
「・・・・やっぱ……ムリかな……。」
私は秋杜が運んできた美味しそうな香りはやっぱり
今の私には重かった。
「みかんでも食べるか?」
私はうなずいた。
席について二人で顔を見合わせた。
「おめでとう。」
「ありがとう。」
「来年の今日はここにもう一人がいるんだな。」
その言葉に想像した。
「なんか信じられない……。」私が言うと秋杜も
「俺も~」って笑った。
来年は・・・まだ秋杜は高校生だから……現実を見ると不安になるけど……。
「親に連絡する。」
「な・・・なんて・・・・・?」
「心配すんな。うちの親に限っては きっと喜ぶはずだし。
変わってっからな~子供思いのいい親だからさ。」
「うちだって……いつかはそうなるって…思ってる気がする。」
「俺にまかせろ。」秋杜が逞しく見えた。
「進路・・・どうするの?」それが一番心配だった。
「本当は大学に行きたいんでしょ?それをあきらめさせるのが…辛いよ……。」
「大学なんていかなくていい。
ずっと考えてたんだ俺……。まだ答えが出てなかったけど
今回のことで答えは出たよ。」
「やりたかったことをあきらめるわけじゃないの?」
おそるおそる秋杜に聞く。
「やりたかったことを……してみようと思うんだ。
なんか…やっと踏ん切りがついた気がする。」
「何がしたかったの?」
秋杜はニッコリと微笑んだ。