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「春湖?」



洗面台に近づいてきた秋杜に 私は体を固くした。



やっと吐き気がおさまってそばにあったタオルで顔をおさえた。



「春湖?どうした?

風邪か?」



秋杜はまだ妊娠だなんて思ってもいない様子だった。



「秋杜……私ね……妊娠してるの……。」




秋杜は顔が止まったままで



「え?何?」と言った。





「あのね…私……ここに…秋杜の赤ちゃんがいるの……。」



お腹をおさえた。

心臓がドキドキしてきた。


秋杜は私が欲しいだけで まだ子供がほしいとは思ってないだろうから…

秋杜がなんて言うのかが 怖かった。





「妊娠?俺の……俺と春湖の…子供?」




「うん……。来年6月 私はママになるわ。」

思わず 自分の意志だけを先に告げた。




「子供……俺と……春湖の………。」



秋杜は一人ごとのようにブツブツ言いながらその言葉を繰り返しながら

キッチンに向かって歩き出した。



「俺の………春湖が……子供……。」



私は秋杜の背中を見ながらどんどん体が冷えていく。



  秋杜に拒否されたらどうしようって……



  一人でも産みたい…そう言ったら……


秋杜はなんて言うだろう……。



「秋杜?」恐る恐る私は秋杜を現実に呼び戻す。



ふり向いた秋杜は…目に一杯の涙をためていた。

私はその涙に 驚いた。




「誕生日プレゼント……。」

秋杜が私を抱きしめた。



「プレゼントはごめんね…まだ買ってないの……。

体調よくなったら……買いに行くから……。」



「何言ってんだ春湖……。今 もらったじゃん俺!!

最高のプレゼント……めっちゃ嬉しいよ!!」



「え・・・?」



秋杜の抱きしめる力が強くなった。



「俺…父親になるんだな……。春湖と俺が愛し合って……そして

もうひとつの生命が……生れてくる…すげーよ春湖!!!」



「産んでいいの?秋杜のそばで……?」



「あたりまえだろ……一人で育てるなんて言うなよ!!

俺たちの子供だろ……。すげーよ!!春湖!!」



  まだわかってないな秋杜は……

 


でもとてもうれしかった。

秋杜が喜んでくれている。

これからどうなるかは…想像もつかないけど 



おままごとの延長かもしれないけれど それでも私は嬉しかった。




「俺はこれから守るものまた一つ増えるんだな。」




秋杜の唇が重なった。



優しいキスだった。



「俺 しっかりしないとな……。」



私は嬉しくて秋杜の胸の中で 目を閉じる。

さっきまでの具合の悪さが嘘みたいに……




「どんなことがあっても…俺が二人を守るからな。

春湖は…黙って俺について来い。

一人で産むとか……んなバカなこと絶対考えるなよ。

わかったか?」




五歳下の秋杜が 私より年上に見えた。




「はい……。」私は素直に答える。



「一人でおいて行ってごめんな……。」




秋杜の腕の中で 私は嬉しくて……泣いた………。




「おたんじょうび…おめでとう……。」



震える声で秋杜に 言った去年言えなかった言葉……。



妊娠というおまけがついた……16歳の誕生日の夜だった。                         

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