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頭が真っ白で どうしていいのかわからなくなった。
診察の時もらったエコー写真にはご飯粒のような
白い塊が写っていて
「これが赤ちゃん……」私は茫然とするだけだった。
一世さんに
「しっかりしなさい。」そう言われて
「はい。」って答えるのがやっとだった。
何か食べないとと一世さんが 私が唯一食べたいと思った
グレープフルーツをたくさん買ってくれた。
「今は 食べたいもの食べて!!」
家に帰ってすぐにかぶりついた。
空腹に沁みわたるビタミンって感じ……。
携帯が鳴って 画面に秋杜が広がった。
「もしもし~」秋杜は元気そうだった。
「もしもし……」
「なんかあったのか?」私の様子に敏感に気づいた秋杜にハッとした。
「ううん~違うの少し風邪気味で……
うたた寝してたの。」
「大丈夫か?熱は?病院行ったか?」
「うん。薬もらってきたけどちょっと調子よくなくて。」
「離れてる時に心配だな。」
「ごめん~大丈夫だよ。心配させてごめんね。」
「無理すんなよ。」
「うん……。」
少し今日の旅行の話をして秋杜は電話を切った。
心配させちゃった……。
秋杜がこのことを知ったらどうするだろう。
きっと困惑するよね。
でもきっと…産もうって言ってムリするよね。
今 自分の進路に悩んでる秋杜を 縛りつけることになるのは
目に見えているから……。
秋杜は勉強が嫌いなわけじゃないし
優秀な子だからそれなりに大学だって行けるけど
もし妊娠なんてわかったら
きっとムリして就職するっていいかねない。
秋杜の好きなことをしてもらいたい。
足を引っ張る存在になりたくないから……。
お腹を撫ぜながら
もらってきたエコー写真の豆粒を見つめた。
「あなたは…まだこんなに小さいのね……。」
秋杜の子供……
世界で一番愛してる人の子供……
「産みたい……絶対産みたい……」
困惑してる中にも私の中の母性が育ち始めていた。
秋杜を縛らないで
この子を産めることができるだろうか……。
その答えはそうは簡単には見つかりそうもなかった。