177
秋杜には光太郎と会ったことを話した。
一瞬複雑な顔をしたけれど
「話してくれてうれしいよ。」と言った。
「春湖が萌の時 たくさん我慢してくれてたんだから
俺にも多少の嫉妬はあるけれど…でもちゃんと話してくれたから我慢する。」
その後の愛の時間はすごく濃厚だった気がするのは私の勘違い?
私の誕生日には
「初めてのプレゼントは自分の稼いだ金でプレゼントしたいんだ。
だからそれまで待っててくれるか?
そのお詫びと言ってはなんだけど……」
秋杜がニヤリと笑った。
もうそれがどういうことなのか私にはわかっている。
頭のいい秋杜はどんどんめきめき 上達して私を酔わせてくれるようになった。
「春湖…愛してるよ……。」
甘い言葉を囁きながら 私を責め立てる。
一緒にいられて体温を感じて…同じものを見て笑って怒って
それが私の一番の幸せだった。
秋杜の中の男が・・・・年下の壁を壊して行く……。
いつしか私は秋杜を守っていたつもりだったけど……
完全に秋杜に守られてる安心感に包まれて行った。
光太郎は自分の夢を追い求めて アメリカに旅立って行った。
一世さんから
「光太郎がよろしくって言ってたわよ。」それだけ聞いた。
私と光太郎の奥深くつながっている気持ちはそれだけで充分だったから……
光太郎の世界進出に噂は弱まり 私も無事に社会人に戻って
季節は夏が過ぎて…もうすぐ秋を迎えようとしていた頃だった。
一通の手紙が届いた。
萌の母親からの手紙には
萌が旅立ったことと秋杜に対するお礼と
そして・・・・
意識を失う前に覚悟をきめた萌が 必死に秋杜に当てた手紙が入っていた。
秋杜は最初 それを読むことをためらっていた。
「萌ちゃん 一生懸命書いたんだよ。
しばらくは…秋杜は萌ちゃんのことだけ考えてあげて……。」
その夜 私と秋杜はひさしぶりに別々の夜を過ごした。
静まり返った部屋には 秋杜の泣き声が聞こえている……。
『萌が旅立ちました。やっと苦痛から解放されて穏やかな寝顔です。
秋杜くんには大変お世話になりました。
いろいろご迷惑おかけしてごめんなさいね。
萌が最高の人生だったよって言ってくれて嬉しかったです。
あなたのおかげです。
これからは萌の分まで 健康で頑張ってくださいね。
あなたの活躍とお幸せを萌と一緒に 祈っています。』
萌の母親からの手紙には 秋杜への感謝の想いが綴られていた。
秋杜は今 深い悲しみの中にいる。
私はどうやってその悲しみの中にいる秋杜を支えてあげようと
考えると眠れなかった。
萌に対しての想いや 後悔にきっと
今 嘆き悲しんでいるんだろう…
秋杜の泣き声は……
朝まで…聞こえていた。
「ごめんな…ごめんな…萌…」
秋杜は
何度もそう言って 泣いた。