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バックの中の携帯の音がした。
『今から帰るよ。買いものしていくけど何食べたい?』
秋杜のメールは 絵文字が一つもない……
いつも思うけど 秋杜らしい。
今日 光太郎に会ったことはちゃんと話そうと思っていた。
秋杜がもう嘘をつきたくないって言った時
私だけが嘘を持っている気がして後ろめたくなった。
でも…あの時あの行為があったから
私は秋杜を待っていられたのかもしれない
約束した二人だけの秘密は
これからも心の奥の後ろめたさを隠して
私の胸の中だけに……しまいこもう……。
『課長の奥さまから夕飯おすそわけしてもらったから
早く帰ってきてね。』と返信した。
家に戻って 鏡を覗き込む。
「春湖~~幸せそうだね~~」
鏡の中の私は幸せそうに微笑んでいる。
秋杜の帰りを待ちかまえて……どうやって迎えようか
何通りのパターンを練習したりして
バカね・・・私ったら・・・
誰かに見られたらホント恥ずかしいから・・・
「何してんの?春湖?」
私は飛びあがった。
玄関には秋杜が立っていて
「え~~~!?いつ帰って来たの?」
「今だよ。外までおかえりって声がして……どっかで見てんのかなって
思ってたら 俺が入って行っても春湖は背中向けてるし……。」
「やだ~~恥ずかしい~~」
秋杜は靴を脱いで上がってきてすぐに私を抱きしめた。
「会いたかった~~もうっずっとずっと春湖のことばっか……」
甘い言葉に胸がときめく
「ダメよ。勉強に集中しなくちゃ~」
「今はダメ……しばらく俺春湖のことしか考えらんない……。
落ち着くまで…ムリムリ~~」
秋杜の唇が近づいてきた。
「うがいしてからね~~」
「あ…うがいするの?こんなに盛り上がってんのに~~」
「うがいしたら一杯キスして~」
私だって待ちきれない…秋杜の後にひっついてうがいを一緒に見届けた。
「早く~~早く~~」
「なんだよ。うがいしなさいって言ったのは春湖だろ?」
まだうがいで濡れた唇を奪った。
腰が抜けそうな甘いキス……
誰にも止められない甘い毎日が二人の間に流れていく……。
「愛してる」
ってお互いささやきながら……甘い甘~い二人の時間が過ぎていく……。